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    Glassdoorの調査から、男女間の賃金格差は依然として存在するものの、 米国、英国などでは少しずつ差が縮まりつつあることが明らかに

    2019年03月26日 | Glassdoor

    米国、英国、フランス、オーストラリアで男女間の賃金格差がわずかながら改善
    ドイツでは男女間の賃金格差が拡大
    米国において男女間の賃金格差が最も大きいのは高齢者、パイロット、メディア、小売
    格差の要因が現状のままであれば、米国の賃金格差解消は2070年までかかるとエコノミストは推定

    カリフォルニア州ミルバレー(2019年3月26日)―この3年間に男女間の賃金格差に対する世界的な関心が高まりましたが、改善に向けた進展はあったのでしょうか?Glassdoor Economic Research外部サイトへは、米国、英国、フランス、ドイツ、その他4カ国を対象に実施した最新の国際調査の結果を発表しました。この『2019年版 男女間の賃金格差是正に向けた進捗』外部サイトへレポートによると、男女間に依然として賃金格差が存在するものの、その差が米国、英国、フランス、オーストラリアではわずかながら縮まっており、2016年に実施した調査外部サイトへ時から改善していることが明らかになりました。新たにカナダ、オランダ、シンガポールにおける男女間賃金格差のデータを加えた2019年版調査は、過去3年間に企業の従業員からGlassdoorサイトに寄せられた50万件以上の賃金情報をもとに実施したもので*1、職種や業種ごとの集計も行いました。このように限定することで、各国の「調整前」と「調整後」の両方の賃金格差を把握することができました。男女間の全体的な賃金格差を示したものが調整前賃金格差で、より近い条件下で比較するために統計的処理を施したものが調整後賃金格差です。

    現在、米国における男女の調整前賃金格差は21.4%、すなわち男性の賃金1.00ドルに対して女性の賃金は平均0.79ドルになります。男性の賃金1.00ドルに対して女性の賃金が平均0.76ドルであった3年前の調整前賃金の男女格差と比べ、2.7ポイント縮まっています。これに、労働者の年齢、学歴、勤務年数、職業、業種、居住地、会社、肩書など、労働者と仕事の特性に応じた統計的処理を適用すると、米国における現在の賃金格差は4.9%となります。これが調整後賃金格差です。調整後賃金格差は、2016年の5.4%から0.5ポイント縮まっています。2019年版の調査結果では、分析を行ったそれぞれの国において、調整前と調整後の賃金に似たような男女格差が見られることがわかりました。上記のペースで、格差の要因が現状のままであれば、米国で賃金の平等が実現するには2070年までかかるだろうと、Glassdoorのエコノミストは予測しています。

    「過去3年間にわたって、企業の経営者、政治家、著名人などが、男女間の賃金格差をなくすよう求めてきました。Glassdoorの実施した総合的な調査では、そうした発言が、格差を埋めることにわずかながら効果があったことを明らかにしました。一方で、職場や仕事に関する要素を調整してもなお世界中で著しい賃金格差が存在するという、さらに大きな事実から目をそらしてはなりません」と、GlassdoorのチーフエコノミストであるAndrew Chamberlainは述べています。「Glassdoorは独自の賃金・給与データベースを活用して、調査結果に表れた男女の賃金格差をもたらしている要因を明確にすることに加え、賃金平等への歩みを遅らせている、データに表れない障壁の所在を明らかにしています」

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    2019年調査の職業、業種、年齢別分析で明らかになった格差

    賃金格差は、労働者の特性(年齢、学歴など)の違いによって「説明できる」ものと、「説明できない」ものとに分かれます。Glassdoorの行った調査から、米国の全体的な賃金格差のうち大半(64%)は説明できるものの、全体的な賃金格差の36%は、Glassdoorのデータで観察できるどの要素を用いても説明できないことがわかりました。つまり、この説明できない賃金格差は、(意識的であるか無意識であるかを問わず)職場の偏見、男女間の交渉力の差外部サイトへ、その他データに表れない労働者の特性によってもたらされている可能性があるということです。

    賃金格差に繋がる最も大きな要素の一つは、男性と女性が特定の産業や職業に振り分けられる現象で、「職域分離(occupational sorting)」とも呼ばれています。米国の全体的な賃金格差の56.5%が、職域分離によるものと考えられます。米国において調整後賃金の男女格差が最も大きい職業はパイロット(26.6%)、シェフ(24.6%)、経営幹部(CEO・CFOなど、24.0%)でした。女性が男性よりも賃金の高い逆の賃金格差が最も大きい職業は、マーチャンダイザー(-7.8%)、研究助手(-5.9%)などでした。男女間の賃金格差が大きい職業のうち、最も大幅に改善したのはコンピュータープログラマーで、2016年の28.3%から2019年の11.6%へと16.7ポイント縮小しました。

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    米国において賃金の男女格差が最も大きい業種は小売とメディア(いずれも6.4%)、次いで建設・修理・保守(6.2%)と石油・ガス・エネルギー・公共サービス(6.2%)です。格差の最も小さい産業はバイオテクノロジー・医薬品(2.2%)と教育関連(2.4%)でした。米国のIT産業における男女間の賃金格差は5.4%と、Glassdoorの行った2016年調査時の5.9%からわずかに0.5ポイント改善しました。

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    調査の結果、年齢については労働者が高齢になるほど男女間の賃金格差も広がることがわかりました。これは2016年の調査結果とも一致しています。米国の18~24歳労働者における男女間の調整後賃金格差は1.4%と、全国平均を下回っています。対照的に、55~64歳の高年齢者では男女間の賃金格差が12.3%と、全国平均である4.9%の2倍以上になりました。前回のデータと比較すると、年齢の低い18~24歳では男女間の賃金格差が1.4%と0.8ポイント改善しており、25~34歳でも2.8%と0.5ポイント改善しています。一方、45~54歳では10.3%と0.8ポイント増加し、55~64歳では12.3%と1.8ポイント増加しました。

    「賃金の男女格差の実情を知ることは、格差をなくすための取り組みに必要不可欠です。そして、知識と貴重なリソースを組み合わせることは、全ての場所で同一労働同一賃金を保障するための次の一歩です」と、Glassdoorのシニアバイスプレジデント兼プロダクト&UX/デザイン・ヘッドのAnnie Pearlは述べています。「Glassdoorはこの3年間、労働者の現在の市場価値を判断するための最新の給与計算外部サイトへツールや、賃金格差があると考えられる領域を特定できるようサポートする賃金格差監査機能外部サイトへなど、テクノロジーを活用したさまざまなツールを開発してきました。これらのツールは、職場での賃金に関する十分な情報に基づいた対話や、より合理的な意思決定に役立っています。私たち誰もが、賃金格差の是正に向けて果たすべき役割を担っているのです」

    「給与自信格差」が男女間の賃金格差の一因?

    自信格差(confidence gap)は、自分の能力に対する自信や信念に関して、男女でどのような違いがあるかを指す概念です*2。Glassdoorの研究者は、男女間の賃金格差にかかわるこの複雑な問題を調査しました。特に「給与自信格差」に着目し、「求人に応募する際に給与自信格差(salary confidence gap)は存在するのか?存在するならば、自信格差は男女間の賃金格差の一因となっているだろうか?」 という点を調査しました。

    この問いの答えを導き出すため、Glassdoorサイトに掲載された求人情報のうち給与見積額外部サイトへの表示された案件への応募データを用いて、そうした求人に応募した男性と女性を、同様の資格を持つ男女を含めて比較しました。その結果、男性は女性よりも総じて給与の高い求人に応募しているものの、同様の資格を持つ男女はおおむね給与額が等しい求人に応募していることがわかりました。調査では、男性が応募する求人の基本給は女性よりも平均で1万3,635ドル(18.3%)上回っていることが示されましたが、これは主に、男女間の全体的な賃金格差の最大の要因でもある職域分離による差が原因です。しかし、同様の資格を持つ男女が応募した求人を比較すると、調整後の「給与期待格差(salary expectation gap)」は1%未満となり、求人に応募する際に期待する給与額は、実質的に男女間で変わらないことがわかります。調査ではこうした所見に基づき、「給与自信格差(salary confidence gap)」という概念が男女間の賃金格差を引き起こす重要な要因である可能性は低いと結論づけています。さらに、今回のデータは、賃金情報を透明化することで、求職者は自身の現在の市場価値により見合った雇用機会を求職中に見つけやすくなることを示しています。

    世界各国の男女間賃金格差

    Glassdoorの2019年版調査では、英国、フランス、ドイツ、オーストラリアにおける調整前・調整後の賃金格差を示し、それらが2016年以降どのように変化しているかを明らかにするとともに、新しくカナダ、オランダ、シンガポールの賃金格差データも紹介しています。これらの各市場では類似した傾向が見て取れます。調整前賃金の格差は相対的に高く、従業員の勤務経験、年齢、居住地、肩書などの追加要因を考慮すれば格差は小さくなるものの、なくなることはありません。米国と同様、英国とオーストラリアでもこの3年間で賃金格差がわずかながら縮まりましたが、ドイツでは改善されませんでした。2019年版調査の対象である8カ国のうち、調整前賃金の格差が最も大きかったのはドイツ(22.3%)で、最も小さかったのはフランス(11.6%)でした。

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    8カ国すべての男女間の賃金格差に関する詳細な分析を含む、Glassdoorの『2019年版 男女間の賃金格差是正に向けた進捗』外部サイトへレポートの全文がご覧いただけます。

    求職者と従業員の皆様へ:Glassdoorのウェブサイトから給与情報をご投稿外部サイトへください。また、Glassdoorで賃金について検索外部サイトへしたり、給与計算ツール外部サイトへを使って現時点での給与見積額を知り、公平に賃金が支払われているかをご確認いただくこともできます。本調査の全容や賃金格差を是正する方法に関する詳しい情報は、www.glassdoor.com/equalpay外部サイトへをご覧ください。

    企業の皆様へ:Glassdoorの無料賃金審査ツール外部サイトへを使って貴社の給与を分析し、賃金格差がないかご確認いただくことができます。平等な賃金の実現を優先課題とする企業の皆様は、5,800社以上が参加するGlassdoorの『平等な賃金実現の公約(Equal Pay Pledge外部サイトへ)』の一員となり、同一労働同一賃金を目指す企業であることを採用候補者に明示することができます。

    この他にも求職者、従業員、企業に向けた以下の資料を用意しています。

    自社の男女間賃金格差を分析するには外部サイトへ

    自身の価値を知るための雇用主ガイド外部サイトへ

    自社の価値を知るための従業員ガイド外部サイトへ

    手引き:給与を交渉するには外部サイトへ

    手引き:賃上げを願い出るには外部サイトへ

    自身の給与が低すぎないか知る方法外部サイトへ

    Glassdoor Economic Research外部サイトへのウェブサイトから、最新の労働市場や経済・雇用に関するレポートを購読することができます。

    *1 本調査は、8カ国の従業員がGlassdoorサイトに投稿した51万954件の給与情報に基づいて、2016年1月1日~2018年12月31日の期間に実施されました。

    *2 男女間の賃金自信格差の存在に関する過去の研究では、意見が分かれました。研究では、昇給や昇進を要求する確率が男性と女性で同じかどうかに焦点が当てられていることが多く、女性は男性ほど要求しない傾向があるとする研究もあれば(Bosquet, Combes and García-Peñalosauet 2018年; Leibbrandt and List 2012年;Bowles et al. 2007年;Babcock and Laschever 2003年)、男女間に差はないとする研究もあります(Artz, Goodall and Oswald 2018年;Belliveau 2012年;Gerhart and Rynes 1989年)。


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