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リクルート事件から経営理念の制定まで
現在のわたしたちの経営理念を制定するにあたって、リクルート事件は大きな契機でした。 ここでは、リクルート事件を、当時の社内ではどう捉え、どのように今につなげていったのかについて、ご紹介いたします。
リクルート事件とは
1988年6月18日、当時リクルートグループの1社であったリクルートコスモスの未公開株が、川崎市助役に譲渡されていることが明らかになったことをきっかけに、「リクルート事件」が始まりました。東京地検特捜部は、4ルート(労働省・文部省・政界・NTT)の収賄側8人と贈賄側4人の計12人を起訴し、全員に有罪判決が確定。その後、2003年3月4日、弊社創業者に下された有罪判決をもって、長きにわたるリクルート事件の審理に幕が下ろされました。
わたしたちは、リクルート事件によって「社会に迷惑をかけた」という重い事実を、深く受け止めました。
このリクルート事件の反省に基づき、わたしたちは社会との関わり方を見直し、経営理念の制定、倫理綱領の制定、社内規定の整備など、現在でいう「企業としてのコンプライアンス体制の強化」の取り組みをスタートさせる大きなきっかけといたしました。
経営理念の制定(1989年版)
中でもリクルート事件を契機にした、企業としてのあり方、社会との関係性のあり方の抜本的な見直しの取り組みは、リクルートという企業自体の社会的な存在意義や目的、今後の経営の目指す方向を示す言葉である「経営理念」に結実しています。 リクルートにはじめて社是が制定されたのは1968年。制定から20年近くの月日が経って、改めて「経営理念」として見直しがされました。
経営理念は、「企業理念」と「経営の三原則」の2つから構成され、リクルート事件の翌年の1989年6月、約1年の議論の末、以下のような内容で、制定し発表いたしました。
企業理念(1989年版)
私たちは常 に社会との調和を図りながら新しい情報価値の創造を通じて自由で活き活きした人間社会の実現を目指す。
経営の三原則(1989年版)
新しい価値の創造
個の尊重
社会への貢献
リクルート事件を通じて、私たちは自分たちの企業姿勢や事業活動が社会からどう見られているのかを、一歩引いて客観視する姿勢が欠如していたのではないか。企業とは社会の公器であるという意識が希薄だったのではないか。このような議論を重ねました。
リクルート事件以前には、社是としての「経営の三原則」は、「商業的合理性の追求」「社会への貢献」「個人の尊重」の3つを掲げていました。
「商業的合理性の追求」は企業の存在にとって必要不可欠ではあるものの、リクルート事件を経て、わたしたちが社会に必要とされる理由、私たちに出来る社会への貢献とは何かを議論した末に至った結論が、"今までにない「新しい情報価値の創造」による貢献"を社会に行っていくという言葉です。
個人のライフデザインの視点に立って、「人の心をより豊かにする」ことを追求し、世の中に新しい価値を提示していく。そしていつも私たちは社会とともに歩む、あたたかくて魅力のある企業であり続けたい。
リクルート事件を機に生まれた経営理念は、その後制定された倫理綱領とともに、20年以上経った今なおリクルートの企業としての存在目的・意義、経営の目指す方向を示しています。
リクルート事件後の取り組み
現在のわたしたちの経営理念を制定するにあたって、リクルート事件は大きな契機でした。
ここでは、リクルート事件を、当時の社内ではどう捉え、どのように今につなげていったのかについて、ご紹介いたします。
ニューリクルートへの提言
連日連夜、トップニュースとしてリクルート事件のことが報じられる中、お客様、そして、社会からの信頼回復に全力で努めるとともに、企業としてのあるべき姿を模索しよう と、88年12月「ニューリクルートへの提言」を実施いたしました。従業員から広く提言を求めるとともに、全社の取り組みとして実践していこうというものです。
リクルート事件によって直面した厳しい現実に対して「経営陣がなんとか立て直すだろう」と待っているのではなく、社員一人ひとりが当事者として立ち向かい、考え、提案し、自ら実行していくことで、新しいリクルートになっていく契機としたい、という意思を込めての取り組みでした。前向きな提言であれば、新規事業の提案でも業務の改善でもよいとされました。「ニューリクルートへの提言」は、従業員が主体的にリクルートのあるべき姿についての検討・議論をする大きな機会となりました。
全社員に向けて提案を募集した当時の告知文
その後、89年の全社マネージャー会議では、全員参加で新しいリクルートを築くための議論が交わされ、「社会的存在であることを強く意識しよう」という方針が確認されました。 また、新しいリクルートを築い ていく過程の中で、信頼の回復や事業の新たな発展を実現していきたいという思いが、当時の社内報や座談会などを通して共有されました。
このときの「ニューリクルートへの提言」の内容が、リクルートの経営理念や倫理綱領の大切なエッセンスとなって現在に受け継がれています。