「Bet on Passion」
リクルートグループの価値創造の源泉は「人」。多様な従業員一人ひとりが存分にその好奇心を追求すること、そして切磋琢磨し、ときにぶつかりあいながら互いに創発しあうことが、想像を超える成果を生むと信じています。 いつも起点は「なんで今こんなに不便なんだ?」「もしもこんなことができたらどうなる?」といった個人の好奇心。好奇心からアイ デアが生まれ、データや事実に裏付けられ、抑えきれない情熱へと変わるとき、経営陣はその情熱に賭けるのです。私たちの中には、ずば抜けた天才もいない。常に正しい解もない。「情熱に賭ける/ Bet on Passion」ということをどれだけ行えるか、それが勝ち残るための唯一にして最良の手段なのです。
瀬名波 文野 取締役 兼 常務執行役員 兼 CSO, CHRO, CRO
この考えは、私たちの価値観(バリューズ)の中で大切にしている、「個の尊重 - Bet on Passion」という言葉にも象徴されています。さまざまな人事制度に仕組みとして反映されていると同時に、"自分が上司にしてもらったように、部下にも機会を提供したい"という思いの部分も含めて、ある種の組織文化となって受け継がれています。
例えば、私自身の経験を振り返ると、ターニングポイントには必ず「賭けてくれた上司」がいました。20代で買収直後のロンドンの子会社のポジションに手を挙げたとき、応募条件をほとんど満たしていなかったにも関わらず、賭けてくれた上司。翌 年に、一度も管理職経験のない私を自分の次の社長に任命した現地の社長。経営に参画する今の立場で考えるとちょっと驚きますが、これが賭けられた側をさらに覚醒させるのです。経験もスキルも足りない、でも会社を赤字転落の危機から救わなくてはならない責任と、思い描く理想だけはある。実現するには、自分ができないことを得意とする人を巻き込んで、チームとして強くしていかなければならない。最初はとにかくもう必死で。相手を尊重するなんて綺麗ごとではなく、とにかく多様な仲間と切磋琢磨しながらやっていくしかなかった、それがやがてチームとして結果を最大化することにつながっていきました。
また、リクルートグループに加わった買収先企業の経営者との最初の面談でよくあるのが、「(新しい上司に対して)どうぞよろしくお願いします。それで、私は何をすれば良いですか?」という問い。これに対し、「あなたの方がわかっているじゃないですか、何がベストかあなたの考えをまず教えてもらえませんか?」と返し、驚かれることがよくあります。上司から命令されるのが当たり前、ましてや買収されたのだから当然パワーバランスが親会社に移ったのだと覚悟している。実際に、全てを委ねることはしません。初めにゴールとOBラインを共有することが大事。絶対的に重要なことは最初に必ず伝えます。これは必ずやりましょう、と。それから、OBラインも伝えます。これより外は無しで、と。でもそのOBラインよりも内側であれば、どんな風にゴールに持っていくかは相手にできるだけ任せます。最初は戸惑いながらもどんどん新しい提案を上げたり、事業を自律的に前に進め成果を出す経営者は、次に例えば自身が買収する側になったとしても、相手企業の経営者にも同じようにコミュニケーションをするようになります。すべてをコントロールしようとせずに、最も重要なゴールとOBラインを共有する。それが成功の秘訣だと当事者として知っているからです。こうして、「個の尊重 - Bet on Passion」がある種の勝ちパターンとなり、ゆるやかに型として伝承されていくのです。
リクルートグループは近年、ステークホルダーが大きく拡がり、これまで以上に私たち自らが変化し続け、より多くの新しい価値を提供し続けることが求められています。しかし私たちにはこれを瞬時に叶える素敵な魔法はありません。私たちの価値創造の源泉はやはり「人」。意志と情熱を持つより多くの従業員に、打席に立つ機会を用意していくこと。最初は空振りでも、バットをブンブン振りながら、失敗しながら学ぶ機会を、一つでも多く提供することが私たちのやり方なのです。