法の遵守のその先へ、社会に期待されるデータ活用を目指す
株式会社リクルートは2021年4月1日よりプライバシーポリシーを改定。同年2月16日にWEBページ「プライバシーセンター」を公開しました。
この取り組みのこだわりや今後の展望について、赤川さや香、山下大介、小島佳世の3名に聞きました。
個人ユーザーとの信頼関係を築くためのプライバシーセンター
これまで株式会社リクルートでは、サービスをご利用いただく個人ユーザーと企業クライアントの「マッチング」のスピードや相互の利便性を高めるため、ユーザーの個人情報を含むパーソナルデータを取得・活用してきました。
ユーザーの情報を活用する以上、プライバシーを保護することは企業として当然の責務です。しかし、2019年にサービスを廃止した『リクナビDMPフォロー』をめぐる問題では同意取得が正しく行われていませんでした。
こうした事態を重く受け止め、リクルート全体として改めてユーザーのプライバシーに向き合っていくべく、2020年4月にリクルートグループのデータの取り扱いや活用に対するお約束「パーソナルデータ指針」を公開。この指針にもとづき、個人ユーザーの方々にリクルートのプライバシーに関する考え方や取り組みを説明するために設置されたのが、「プライバシーセンター」です。
「私たちがこのプロジェクトにおいて考え続けたのは、"リクルートはプライバシーに対してどうあるべきか"。もちろん、法の遵守は大前提ですが、リクルートがデータを活用してきた目的は、個人ユーザーの人生をより良いものにするためです。保守的になりすぎて、データの利活用を止めてしまったら、リクルートが目指す世界観『Follow Your Heart』には近付けない。私が実現したかったのは、一昨年にリクルートが起こしてしまった問題を真摯に受け止めながらも、個人ユーザーに正しく理解と期待をしていただきながらデータを活用できる"信頼関係"をつくることでした」と赤川は振り返ります。
専門家や一般の個人ユーザーと対話を繰り返し、伝わりやすさを追求
プライバシーセンターの検討にあたって重視したのが「客観性」。社外のさまざまな声を取り入れながらページの構成や表現の一つひとつを練り上げていきました。
「例えば、新規科学技術を社会に実装する際の課題について研究されている、大阪大学ELSIセンターの皆さんのご協力。専門家の目線で法的・倫理的に説明不足 な点をご指摘いただき、私たちには耳の痛い話も率直に意見をもらえたからこそ、抜けもれなく情報を盛り込むことができました。あわせて、一般の個人ユーザーの方々にも聞き取り調査にご協力をいただきました。すると、今度は『情報があり過ぎても良く分からないし、自画自賛のようで印象が良くない』という逆の意見をいただくことに。商品開発で用いられるような社外レビューのプロセスを、社外に示す方針としての掲出文書に導入したのは、大きなチャレンジでした」と山下は言います。
こうした試行錯誤を経て、2021年2月16日より公開しているプライバシーセンターは、イラストや図解を用いて、一般には分かりづらいテーマを整理しユーザーの個人情報を含むパーソナルデータがどのように扱われているのかを分かりやすく解説。リクルートのパーソナルデータに対する姿勢・スタンスを明確に提示したことが社外からもポジティブに評価されています。
「リクルートは多くのパーソナルデータを保有する企業です。そして2019年には『リクナビDMPフォロー』をめぐる問題もありました。でもそんな私たちだからこそ社会にお伝えできることもきっとある。改善・進化の道のりを共有することで、リクルートの中だけでなく社会全体でより良いスパイラルをつくっていけたら良いですね」と小島は言います。
プライバシーセンターを通じて、社会との信頼を築いていきたい
プライバシーセンターは社外に対してだけでなく、リクルートで働く人たちに対するメッセージでもあったと山下は言います。
「社内のリスクやガバナンスに対する意識はこれまでになく高まっています。ただ、守る意識が強くなることで、サービスやソリューションの企画担当者が萎縮し過ぎると、価値の高いサービスは生まれにくい。守るべきことは守りつつも、より良いサービスを社会に提供していくためにデータ活用をさせていただきたい、というメッセージも込めたつもりです」
この先、リクルートはもちろん、社会全体でデータ活用がさらに進むのは間違いないでしょう。技術や活用シーンもますます複雑化していくはずです。だからこそ、個人ユーザーの権利を守り安心していただくためにも、謙虚な姿勢で分かりやすく正直に伝えていくこと。こうしたプライバシーセンターの果たす役割に、社外からも期待をいただいており、パーソナルデータ指針を策定した当社諮問委員会の諮問委員も務めた、慶応義塾法科大学院 山本龍彦教授から以下のようにコメントをいただきました。
「今回設置されたプライバシーセンターは、企業が面倒に思いがちなところにも誠意をもって対応したものになっています。一方で、コンテンツはまだまだ面白くできる余地もあるのではないでしょうか。リクルートがデータの観点で日本をリードすべき立場にあるのであれば、データの取り扱いやプライバシーの問題に対する悩みや葛藤まで含めて広く社会に発信すべきでしょう。人々が興味関心を持つような発信への挑戦は、個人ユーザーのみならず、企業クライアントとの信頼構築においても重要になっていくはずです」
赤川 さや香(あかがわ さやか)
株式会社リクルート リスクマネジメント 兼 プロダクト統括本部 プロダクトマネジメント統括室 クオリティコーディネート室
2007年リクルートに入社。人材領域の営業職・企画職を経て、販促領域へ異動。CRM&マーケティングや、リクルートIDの統合プロジェクトなどを担当
山下 大介(やました だいすけ)
株式会社リクルート リスクマネジメント 兼 ソリューション法務室 データプロテクション&プライバシー部 DPP1グループ
Web系スタートアップや大手通信会社での事業開発を経て、2013年リクルートホールディングスに入社。外部プラットフォーマーとの提携業務等を担当した後、2018年より株式会社ブログウォッチャーに出向。現在は同社のデータプライバシー責任者とリクルートのソリューション法務部を兼務
小島 佳世(こじま かよ)
株式会社リクルート リスクマネジメント 兼 株式会社リクルートホールディングス 経営企画本部 PR コーポレートコミュニケーション 社外広報グループ
大手インターネットサービス企業、PR会社を経て、2017年リクルートホールディングスに入社。以来、一貫して社外広報業務に携わりながら、2020年11月よりプライバシープロジェクトに参画