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地元企業とUSG Restartによる共同研修で未経験者の就業を支援

労働市場から遠い人々へも就業機会を

オランダでは近年、応募者の学歴や職歴に関わらず、学び、働く意思のある人なら積極的に採用するという考え方が推進されています。この考え方の下では、なんらかの理由で労働市場から距離があるために不採用となりがちな人々も、平等に就労機会を得ることができるとして注目を集めています。オランダに本社を構えるUSG Restartでは2017年から、行政や地元企業と連携してこの考えに基づいた就労支援スキームを構築しており、十分な教育を受けられなかった人々や、なんらかの理由で仕事に就くことができない人々、異なる領域で新しい一歩を踏み出そうとしている人々の支援を行ってきました。

USG Restartで本スキームに携わっているヤネット・ファン=ブリッタースヴェイクによると、「ダイバーシティを求める声は社会全体で年々大きくなってきており、企業もさまざまな人々を採用したいと考えています。しかし就労経験がない人を各企業でゼロから教育することはハードルが高いのもまた現状。そこで私たちが間に入り就労前の研修と、求職者が自分にあった企業を見つけるためのお手伝いをしています」

就業までシームレスな研修制度

USG Restartの就労支援スキームでは、求職者はUSG Restartのスタッフとともに自身の興味や特性を見極めながら、計8か月の研修期間を通じてスキルを磨いていきます。研修修了後は、履歴書なしで本スキームに参加している企業の面接・採用へと進みます。

研修には主にふたつのタイプがあります。ひとつはUSG Restartから提供されるもので、社会で働くにあたってのベーススキルを身に付けるもの。多くの研修生は就労経験がないか短期間しか働いたことがないため、タイムマネジメントやコミュニケーション、チームでの協働についてなど、基本的なことから学んでいきます。もうひとつは、提携企業各社から提供されるもの。研修修了後に即戦力として働くことができるよう、各企業に特化した専門的な知識を学び、必要に応じてトレーニングも行われます。ふたつのタイプを組み合わせたさまざまなコースがレベルごとに用意されており、研修生の興味や特性をもとにUSG Restartのスタッフと話し合って受講するコースを決めていくのです。研修生の中には週に1~2度、専門学校に通いさらなる専門スキルの習得を目指す人もいます。

研修生がグループで研修を受けている様子

企業は最大で約半年の間、研修を通じて研修生の性格や特性を見ることができるので、一般的なオープン・ハイアリングと比較して、研修生のことをより理解した上で採用することができ、また採用後の配属についても、応募者と企業双方にとってより望ましい選択をすることが可能です。就労経験がない、もしくは浅い研修生も、将来の職場で働いている従業員と早くから交流を持つことで、就業イメージを膨らませることができ、自身の志向に合っているかを都度考えることができます。

研修の途中で、自分の志向と合っていないと感じたら、研修生はいつでもコースを変更することができます。また、全てのコースはレベル別に細分化されており、同じレベルの少人数のグループで研修に参加します。講師やスタッフは一人ひとりを綿密にフォローし、コースを変更した研修生にも柔軟に対応することができるのです。

2017年に「ユンボ」という地元の大手スーパーマーケットの要望に応える形で始動した本スキームは、瞬く間に口コミが広がり、今では50以上の企業が参加し、これまでに300人を超える卒業生を送り出しました。研修参加者は、スーパーやデパート、物流企業、政府系組織、電力系の企業など、多くの選択肢から就職したい企業を自身で選ぶことができます。

ヤネットは言います。「研修は楽ではありません。むしろ、ほぼゼロの状態から就業に向けて身体とマインドの双方を慣らしていく必要があるため、多くの研修生にとってはかなりの努力を要します。しかしこのスキームが喜ばれるのは、求職者にとっては就業までのプロセスが明確で、努力すべき方向性が見えているため。そして企業にとっては、採用後にミスマッチが起こるリスクが低いうえに、従来なかなか強化できなかった職場内のダイバーシティ・インクルージョンを推進する策のひとつになるためです」

フォークリフトの操作法を学ぶ研修生

ハンディキャップを乗り越えて―エレーニの挑戦

本スキームに参加している企業のひとつに「ステーディン・グループ」があります。ステーディンはオランダで送電・送ガス網を維持・運用している大手企業で、2019年から本スキームを活用して多様な人材の確保に努めています。

このスキームを通じて送電技術者としての道を歩み始めたひとりが、31歳のエレーニ・ドゥ=コック。彼女はもともとダンサー兼振付師として働いていましたが、腎不全によって激しい運動が難しくなり、仕事をあきらめざるを得ませんでした。厳しい現実に打ちのめされていたエレーニでしたが、しばらくして彼女は、幼少期から興味があった機械整備の仕事に就こうと決意します。整備士の父親の仕事を手伝っていた経験から、幼いころから機械に触れるのが大好きだったのです。

腎不全を患う彼女にとって、オフィスではなく外に出て働く仕事は体力面での不安がありましたが、万全のサポート体制のもとエレーニは8か月の研修をすばらしい成績で終えました。

「エレーニは多くの研修生の憧れであり、目標でもあります」とヤネットは語ります。「私たちはこれまで、300人以上の研修生を送り出してきました。十分な教育を受けられず、企業での就労経験もない状況から、彼女ほど努力をして成功を収めた研修生はほとんどいません」

エレーニは今では、同僚に作業用機器の操縦を教える立場にもなり、ステーディンに不可欠な人材として現場で精力的に働いています。また、その働きぶりと熱意が認められ、週の半分はUSG Restartでステーディンの別の専門コースの研修を受け、次のステップに進むために着々と準備を進めています。

作業車から工具を搬出している女性

Stedinの社員として働くエレーニ。週に数回、現場で技師として働いている

最後に、エレーニに研修に参加したことについて感想を伺いました。「研修と就労の機会を提供してくれたステーディンとUSG Restartに心から感謝しています。仕事内容は決して楽ではありませんが、素晴らしい仲間に囲まれて毎日仕事に行くのが楽しみです。努力はきっと報われます。私がそうであったように、働きたいけどどうやったら働けるのかわからない人々が、このスキームを通じてやりがいのある仕事に就けることを願っています」

ヤネット・ファン=ブリッタースヴェイク

ヤネット・ファン=ブリッタースヴェイク

USG Restart Career 事業担当マネジャー

アムステルダム応用科学大学で経営学の学士号を取得後、2012年にStart Peopleのコンサルタントとしてキャリアをスタート。2017年からは、包括的で持続可能な労働市場に焦点を当てたRGF Staffing the Netherlandsの子会社であるUSG Restartの一員として活動しています。2021年7月より、USG Restartの1部門であるUSG Restart Careerの事業担当マネジャーに就任。すべての人にとって最高の雇用機会を提供することに情熱を注いでおり、彼女が率いるUSG Restart Careerでは日々その目標に向かって活動を続けている

2022年01月17日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。