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IndeedとGlassdoor初の共同レポートにみる採用と職場環境に関する5つのトレンド

リクルートグループ内の2つの研究機関、Indeed Hiring LabとGlassdoor Economic Researchは2022年11月16日、初となる共同レポート『採用と職場に関するトレンドレポート 2023』を発表しました。本ブログは、レポートでハイライトされている労働市場の5つのトレンドを、IndeedでChief Economistを務めるSvenja GudellとGlassdoorのChief EconomistであるAaron Terrazasのコメントとともにご紹介します。

確かなデータに基づく5つのグローバルトレンド

Indeed Hiring Labは、世界有数の求人検索エンジン(注1)のIndeedが持つ経済研究チームで、エコノミストとデータサイエンティストで構成されています。今回は初の試みとして、姉妹会社の経済研究機関Glassdoor Economic Researchと協業することで、仕事と企業に関する洞察で世界をリードするGlassdoorが有する働く人たちの生の声に基づくデータも取り入れた、より多面的な切り口のトレンドレポートを発表しました。そこで取り上げられていたのは、以下5つのトレンドです。

(注1) Comscore、総訪問数 2022年2月

1.労働供給不足が引き続き採用に影響

「今日、働く人はこれまでになく大きな力を持っています。コロナ禍が過ぎたら、また揺り戻しが起きて、企業が交渉力を取り戻すのでしょうか?ほとんどの工業先進国ではそうならないと私たちは思っています。これは、既にあった人口トレンドがコロナ禍でさらに加速した結果起きているもので、一過性のものではないからです。」とSvenjaは言います。多くの国々、特に日本、中国、ドイツ、米国などでは高齢化が進んでおり、今後も労働人口の減少が見込まれます。特筆すべきは日本の例で、2010年には1億2800万人いた人口が、2050年には1億人を割り、しかもそのうちの65歳以上が占める割合も非常に大きくなる見込みです(注2)。ドイツでも、2026年から2036年にかけて、15歳から65歳の労働人口が7.2%減少するというデータが出ています。こうした労働市場のひっ迫は今後も継続し、企業の採用が厳しい状況は続くことが予想されます。

労働力の減少が見込まれる国を示す棒グラフ

2.リモートワークの浸透

2022年9月時点で、多くの先進国ではリモートワークの求人が10%前後を占めており、2019年9月の3%前後と比較すると大きく上昇しています。この傾向は今後も続いていくものと考えられ、さらに通勤が必要な職種の採用にも大きな影響を与えると見られます。リモートワークが可能な職種に労働者がシフトしていくことで、通勤が必須な仕事の採用が厳しくなるのです。また、米国の25歳から54歳の求職者を対象にした調査によると、新しい仕事を探している動機として、女性の16%が「リモートワークができる仕事に変えたい」と答えた一方で、男性では11%にとどまりました(注3)。リモートワークにはメリットもある一方、ジェンダーによる経済的格差や役割の固定化につながる可能性もレポートは示唆しています。

リモートワークの求人の割合は引き続き高いレベルを継続

(注3) 出典:Indeed Hiring Lab求人検索調査(2021年7月~2022年2月のデータ)

3.求職者がより高い給与を求めるなか、福利厚生が差別化のポイントに

求職者がIndeed上で仕事探しをする際、検索条件にする時給額が上昇しています。米国では、2019年から2020年にかけて「15ドル」での検索数が「20ドル」を上回っていましたが、2021年4月にはこれが逆転し、以降「20ドル」での検索数が大きく上回るようになりました(注4)
一方で、福利厚生を求人内容に含めてアピールする企業も増えています。時給15ドル未満の仕事の求人で、有給休暇や年金、健康保険などといった福利厚生を用意する企業が急激に増えている点は特筆すべきでしょう。例えば、2019年8月から2022年8月の3年間で、介護や在宅医療などの低賃金セクターでは、有給休暇を明記する求人が 21.3% から 38.8% に増加しました。これについてSvenjaは、「まだこれがスタンダードになったということではありませんが、企業が懸命に人材を惹きつけようとしている様子が既に見て取れます。給与と福利厚生が抱き合わせで考えられるようになってきています。」と説明します。また、Glassdoorのデータから、メンタルヘルス関連の福利厚生も、業界にかかわらず増加傾向であることも分かっています。

時給15ドル未満の求人で福利厚生が増えている

4.重要視される幸福度と心身の健康

給与や福利厚生も重要ですが、もはやそれだけでは十分ではありません。Indeedが行った調査では、2021年時点で既に46% の人が「職場での幸福度の重要性が高まった」と答えており、86% の人が「職場でのストレスはクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を下げる」と述べています(注5)
また、「仕事に楽しさややりがいを感じる」「自分の居場所だと感じる」「同僚や雇用主が自分を支えてくれる(職場の心理的安全)」という3つの要素が、今後さらに重要になることもIndeedのデータから見えてきており、企業文化は企業が差別化を図る上での重要な要素になるでしょう。
また、当然のことながら、職場での満足度が高くなるほど、転職を検討する割合が低くなることもGlassdoorのデータから分かっています。

仕事の満足度が高い人は転職活動をしない傾向を示すグラフ

5.労働力の変化に伴い、より重要視されるダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)

職場におけるDEIをどれだけ重視するかは、性別・人種・拠点・子供の有無などの属性よりも、圧倒的に年齢が影響しており、世代間で大きなギャップが存在するということが分かりました(注6)。18歳から34歳のグループでは約7割が、上司にDEIへの理解がない職場だと分かったら離職を検討すると回答したのに対し、65歳以上のグループでは45%にとどまりました。経営陣のジェンダーや人種のバランスが取れていない職場についても同様に、若手層がより高い割合で離職を検討すると答えています。Svenjaは、「この若い労働者たちは、労働市場の未来を担う存在です。ですから、これらの要素は本当に、本当に、本当に重要になるのです」とDEIに取り組む意義を強調しました。また、「良い人材を採用したい、よい職場環境を築きたい、という動機でDEIに取り組むのはもちろん大切なことです。しかしDEIは企業自身にとっても本当に重要なことですし、社会全体にとっても素晴らしいことなのです」と述べました。

職場のDEIは若手層ではより重要だと示すデータ

(注6) 出典:IndeedとGlassdoorが2022年9月に行った調査

今後数年間は続く人材採用難に企業は対応を迫られる

Svenjaは今後についてこうまとめます。「新型コロナウイルス感染症は、人々の働き方に非常に大きな影響を及ぼしました。企業のリーダーたちは、こうした変化や転換は一時的なものではないということをしっかりと理解する必要があります。多くの企業が待ち望んでいると思われる『平時』に戻ることは、もはやないでしょう。今回見えてきた5つのトレンドは、今後の労働市場、そしてニューノーマルに対する考察も含むもので、私たちが社内外から入手した確かなデータに基づいています。つまり、短期的な景気変動はあっても、人口動態や人々の価値観の変化により、今後何年にもわたって人材採用難が続くことは明らかでしょう。」

未来の労働市場が実際どうなるのか、確実なことは誰にもわかりません。しかし、このトレンドレポートの通り企業が労働人口の高齢化と採用競争の激化に直面し続けるとすると、どうやって人材を探すか、そしていかに他社との差別化を図って人材を惹きつけていくか、そしてそこでイノベーティブなアプローチを取れるかが、明暗を分けるポイントになるでしょう。

Aaronも、「この2年間、変化が激しくボラティリティが増大している社会で、世界中の企業経営者たちが従業員のモチベーション向上とリテンションに頭を悩ませる中、組織の最前線で対応を迫られてきたのは現場のリーダーたちでした。今後の職場の課題を解決するためには、従業員のあらゆる希望やニーズを理解するための、より確かなアプローチが必要です」と語りました。

IndeedでChief Economistを務めるSvenja Gudell

Svenja Gudell

Indeed Chief Economist

ZillowのChief Economistとして10年間不動産市場の調査研究に携わったのち、2022年1月にIndeedにChief Economistとして入社。エコノミストとデータサイエンティストからなるIndeed Hiring Labを率いて世界の労働市場に関する議論をリードしている

GlassdoorでChief Economistを務めるAaron Terrazas

Aaron Terrazas

Glassdoor Chief Economist

トラック輸送の新興企業Convoyおよび不動産マーケットプレイスのZillowで経済調査ディレクターを務めたのち、2022年6月にGlassdoorに入社しGlassdoor Economic Researchプログラムをリードしている。2012年に米国財務省のマクロ経済分析担当副次官補をサポートするエコノミストとしてキャリアをスタートしたAaronは、無党派の移民政策研究所で移民と労働市場のアナリストとして勤務した経験も持つ

2022年12月01日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。