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訪問美容サービスの未来を創る、『ホットペッパービューティーアカデミー』の取り組み

高齢化が進む日本では現在、美容室に足を運べない人たち向けの「訪問美容サービス」の需要が拡大しつつありますが、まだサービスを提供できる事業者も美容師も多いとは言えない状況です。高齢者、闘病中の方、子育て中の方などが、施設や自宅にいながらも、ヘアサロンを選ぶように多くの選択肢から自分にぴったりの訪問美容サービスを選んで楽しめる未来のために。リクルートの『ホットペッパービューティーアカデミー』で訪問美容の普及に取り組む服部美奈子に話を聞きました。

訪問美容サービスの持つ価値とポテンシャルは大きい

訪問美容と言えば、介護施設に入居する高齢者のもとを美容師さんが訪れて髪を切る様子を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。同じように自宅に美容師さんが来てくれたら便利ですよね。でも利用した事のある方、周りで利用したという話を聞いたことのある方は多くはないでしょう。

というのも、現行の日本の法律では、ヘアカット、セット、カラーリング、パーマなどを含む美容施術は、国家資格を持った美容師が美容所登録された店舗で行わなければならないと定められているからです。それが難しい場合に限って例外が設けられていて、結婚式や演劇の直前のヘアメイクなどとともに、外出が困難な場合がその例外に含まれています。高齢、疾病、要介護などの理由で外出が困難な方に加え、2016年の規制緩和で乳幼児の育児や要介護のご家族の介護を担っている方も対象になりました。

つまり、現状、訪問美容は誰もが利用できるサービスではないのです。しかし、高齢化の進む日本では、今後その対象者が増え、それに伴ってニーズも拡大していくことが見込まれます。また、コロナ禍になってからは、子どもをもつ母親の利用も増加しています。

とはいえ、まだ訪問美容の認知度は低く、入社前に美容師として働いていた経験を持つ服部でさえ、『ホットペッパービューティーアカデミー』で訪問美容の普及に向けた取り組みの担当になった当初は具体的なイメージが持てなかったほど。ヘアサロンでの美容サービスとの違いを理解するため、服部は現場に飛び込み、そしてその価値を初めて実感したと言います。

「ある介護施設で出会ったご高齢の方は、髪をセットしてもらった後の目の輝きが、施術前と全く違っていて、驚きました。何歳になっても、美しくなることで心も輝く。『美容の持つ力』を実感しました。また、介護施設の方からいただいた『月1回の訪問美容師が来る日は明るくなります』というお話も印象的でした。介護士さんから利用者様に『素敵になりましたね!』という声がけが飛び交い、施設全体に笑顔があふれます。介護施設で働くスタッフさんにとっても、その笑顔がとてもよい刺激になるというお話を伺い、訪問美容の多面的な価値に気づかされました。」

訪問美容を笑顔で楽しむ女性

訪問美容を担う事業者や美容師の裾野を拡げるために

一方で、現状では訪問美容を手掛ける事業者も美容師もごく一部に限られており、そして今後の高齢化社会を見据えると、その数が不足することは明らかです。

リクルートは2015年に、サロン経営のノウハウを提供する『ホットペッパービューティーアカデミー』の活動の一環として、訪問美容の普及に向けた取り組みをスタートしています。当時はセミナーイベントや日本全国の事例を紹介するインターネット記事の連載などを行って、セミナーにも多くの参加者が集まりましたが、実際に訪問美容を始める方はなかなか出てきませんでした。そこで2018年、対象者を30人以下に絞って徹底的に参入をサポートする「訪問美容ゼミ」を開始。服部は、このゼミの参加者の営業に同行するなかで、訪問美容特有の壁に気づきます。

まず、一番大きな壁は営業活動のノウハウを持っていないこと。美容室ではお店でお客様を待っていればよかったところ、訪問美容でお客様と出会うためには、まず介護施設やケアマネージャーの方、個人でニーズを持つ方とお話して、サービスを提案し、契約をするまでの営業活動を自分でやらなければなりません。そのノウハウを持っていないために実際の営業活動に踏み出せなかったり、またいざ商談に臨めても、「こちらから営業しなければと気が焦るためか、お客様の課題や希望を十分にヒアリングすることができず聞き逃してしまっているケースが多かった」と服部は振り返ります。

また、美容師自身が持つ心理的な壁も立ちはだかります。「お客様に営業の電話をかけたり訪問したりすることを非常に申し訳ないことだと感じている方が多い。訪問美容は、ご利用者様にも、介護施設など介護に携わる方々にも価値のある、本当に素敵なことなので、とてももったいなく感じました」と服部。営業をすることに美容師の方が訳もなく罪悪感を持ってしまっているケースが多く見られたというのです。

しかし、ひとたびこれらの壁を乗り越える方法を知ると、美容師の方たちの表情が変わり、訪問美容に前向きになっていくのが実感できたと言います。日本中にまだまだたくさんいるであろう「訪問美容をやってみたいけれど、どうしてよいか分からない」という美容師の方々にリーチして、ひとりでも多くの方の背中を押したい、そして訪問美容の裾野を拡げていきたい。服部たちは、積み上げてきた知見を分かりやすく、かつより多くの方々に伝えられる方法を模索し始めます。そして最終的に、これまでセミナーやゼミを通じて対面で伝えてきた内容を動画にまとめて、広く一般に、しかも無料で公開するという方法を選択しました。

幅広い対象者の方々に、双方向でない動画という媒体を通して、いかに内容を届けるかが大きな課題となったコンテンツの制作過程では、情報の取捨選択に徹底的にこだわり、忙しい美容師の方でも隙間時間で視聴ができるようにと各動画は10分以下に編集。動画は2022年夏に公開され、訪問美容に関する法律などの基本ルールを解説したものや、商談の流れや話すべき内容を解説したもの、起こりがちなトラブルやそれを防ぐ方法など、現時点で8本が視聴可能になっていて、既に多くの方々に視聴頂いています。また、新たなコンテンツも追加していく予定です。

2022年12月時点で視聴可能な訪問美容関連の動画ラインナップ

2022年12月時点で視聴可能な訪問美容関連の動画ラインナップ

誰もが自分らしい「訪問美容」に出会える未来に

訪問美容の持つ価値と今後について服部は、こう語ります。「私自身も子育て中に美容院に行くこともままならない経験をして、より訪問美容を身近に感じるようになりました。歳を取らない人間はいない。いつか、家族や自分にも関わることです。家族や私自身が外出がままならない状況になっても、いつでも自分にぴったりの訪問美容師さんに出会える世界を創りたいと考えています。少子高齢化社会が進展しても、訪問美容によって、誰もが生き生きとした毎日を過ごすことをお手伝いできるかもしれません。それは、リクルートグループのビジョン“Follow your Heart”にも通じるような気がしています。そんな素敵な希望あふれる世界を創るための一歩が、この訪問美容の支援活動だと考えています。これからも、美容業界の活性化に貢献できたらと思っています。」

服部 美奈子 株式会社リクルート ビューティDivision リサーチ&アカデミーグループ

服部 美奈子(はっとり みなこ)

株式会社リクルート ビューティDivision リサーチ&アカデミーグループ

美容院勤務、派遣スタッフを経て、2008年リクルートに入社。美容領域でスタッフとして勤務後、2014年1月に『ホットペッパービューティーアカデミー』開設準備室へ。2016年より訪問美容支援活動を担当し、現在に至る。現在2歳の子どもの育児と仕事の両立中

2022年12月15日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。