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パートナー企業の皆さまとの連携でバリューチェーン全体の脱炭素化を加速するリクルートの取り組み

リクルートグループの温室効果ガス(GHG)排出量の90%以上を占めるのは、自社以外のバリューチェーンからのGHG排出量(スコープ3)。この削減に向けて、日本で事業を展開する株式会社リクルートは、パートナー企業の皆さまに積極的に働きかけ、日本全体の排出量の削減への貢献も見据えた戦略的な取り組みを進めています。また、こういった取り組みが評価され、リクルートグループ全体としても、世界で上位8%の企業のみが表彰されるCDPサプライヤー・エンゲージメント・リーダーに2年連続で選ばれています。今回は、アースデーに寄せて、日本国内の取り組みをご紹介します。

パートナー企業の皆さまとの強力な連携で脱炭素を目指す

サービス提供企業であるリクルートグループでは、事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1および2)の全体に占める割合は10%未満と少ないもので、かつ2021年度分のスコープ1および2については既にカーボンニュートラルを達成できる見込みです(注1)。このため、リクルートグループが掲げる「2030年度までに、自社の事業活動およびバリューチェーン全体を通じたGHG排出量のカーボンニュートラルを達成する」外部サイトへという目標を達成するには、グループの事業活動を支えて下さっているパートナー企業の皆さまとの連携が欠かせません。

リクルートグループの2020年度のGHG排出量の内訳を示したグラフ。90%以上がスコープ3に該当することを示す。

リクルートグループの2020年度GHG排出量のうち90%以上がスコープ3

リクルートグループはこの目標の達成に向けて、地球の平均気温上昇を産業⾰命前と⽐べ1.5度未満に抑える「1.5度⽬標」(注2)に基づく水準で、2022年度から始まる3カ年⽬標を定め、より実質的な取組みをパートナー企業の皆さまと連携しながら進めてきました。

2021年および2022年には、世界最大の気候変動に関する格付け機関であるCDPから、サプライヤー・エンゲージメント・リーダーに選定されました。これは、気候変動課題に関してサプライヤー(パートナー)に効果的な働きかけを行っている企業を評価するもので、選出されたのは世界の上位8%のみ(2022年度は653社、うち日本企業は131社)。リクルートグループ全体の取り組みのなかでも特に、日本で事業を展開する株式会社リクルート(リクルート)のパートナーの皆さまへの積極的な働きかけが高く評価された結果でした。まだスコープ3のGHG排出量の把握に取り組む企業数も少ない日本において、リクルートはパートナー企業内のGHG排出量全体の測定や削減に向け、ノウハウの提供やプランニングへの協力など、一歩踏み込んだ活動を心がけています。

格付け機関CDPによるサプライヤー・エンゲージメント・リーダーの認定ロゴ

(注1) 事業活動における温室効果ガス排出量は、スコープ1、スコープ2の合計。カーボンニュートラルには、温室効果ガス排出量の削減に加え、残りの排出量のオフセットを含む。温室効果ガス測定後、2023年4月までに排出量に対する第三者認証を取得し、その後オフセットを行い、2021年度の温室効果ガスに対するカーボンニュートラル保証を取得予定。
(注2) IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) により報告された気候科学に基づき、地球温暖化を産業⾰命前の温度レベルと⽐較して1.5℃以内に維持するために必要な脱炭素のレベルと⼀致するGHG排出削減⽬標。

世界的にも非製造業の事例が少ないスコープ3の「精緻化」を日本でスタート

そんなリクルートが2022年度から特に力を入れているのが、パートナー企業の皆さまとともにGHG排出量の測定を「精緻化」する取り組みです。これは、GHGの排出源を特定し、効果的な削減策につなげるための第一歩です。

現在、日本の多くの企業では、取引額と汎用的な排出係数を使ってスコープ3のGHG排出量を算定しています。業務委託費や広告宣伝費などといった自社の勘定科目ごとの金額に、環境省や研究機関が公開している汎用的な排出係数をかけ合わせて簡易的に見なし排出量を算出する手法です。リクルートのサステナビリティ推進室で環境担当を務める山西慧は「この手法では、取引先企業の排出量が過大に見積もられている可能性や、取引額に現れない取引先企業のGHG削減努力を反映できないことが課題です。そのため、排出量を削減するには、パートナー企業との取引を縮小するほかなく、事業成長と環境推進を両立しにくいことが課題となっていると感じます」とこの取り組みのきっかけとなった課題感について話します。さらに、「各業界の汎用的な排出係数も10年程度変わっていないものが多く、先進的な取り組みを行うパートナー企業の皆さまに当てはめた時には特に、実態と大きな乖離が生じてしまいます。その為、難易度は高いが、パートナー企業ごとの排出量の測定、つまり精緻化に取り組むべきだと考えました」と付け加えます。

しかし、パートナー各社の環境への取り組み状況は様々であり、すべてのパートナーの皆さまが一様に実測値を捕捉できるわけではありません。また、こうした実測値の捕捉は、国際的にも推奨されているものの、国内メディア業界では、おそらくリクルートの取り組みが初めてです。

早い段階で取り組みの趣旨に賛同下さったパートナー企業の一つ、エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)でコーポレート統括本部サステナビリティ経営推進部グリーンイノベーション推進室長を務める下垣 徹氏は、「当社からは、パートナー各社との議論で得た知見や、グローバルで有力なルールメイキングの動向をもとに、精緻化のステップを提案しました」と振り返ります。ここから得た知見は、リクルートのその他のパートナー企業の皆さまとの取り組みも加速させる大きな力となりました。

現在リクルートは、パートナー企業約30社と、排出源の特定から連携を進めています。このとき、一方的な要請ではなく、それぞれのパートナー企業の皆さまに最適な算定方法をともに模索する対話のプロセスを大事にしています。パートナー企業のご担当者様からは、「事業拡大とGHG削減の両立に悩んでいたので、取り組みをリードしてくれるのはありがたい」「排出量算定のルール作りや中小企業への環境活動支援なども協力し、日本における環境への取り組みを一緒に引っ張っていきたい」などといった前向きな反応を頂けています。山西も「起案した当初は社内でも事業影響を心配する声が聞かれましたが、結果的に事業影響が少なく、かつパートナーの皆さまとのエンゲージメントもつくれるような、両社の事業にメリットがある取組として進めることが出来ています」と語ります。一部の企業とは、GHG排出量削減に向けた中長期ビジョンを相互に共有し、排出量の測定と精緻化に向けた議論を進めています。

精度の高さに応じた把握レベル、算定方法を示した表

パートナー企業の状況に合わせて3段階のうちいずれかの算定方法を適用

より多くの企業を巻き込んで、日本の脱炭素化を加速する

バリューチェーンにおけるGHG排出量は、複数の企業が相互に連携、協力し合うことで、全体の削減規模を大きく拡大し、スピードアップできるのがその特徴です。山西は「脱炭素に関する情報の不均衡に対しても、仲間づくりやノウハウの共有を通じて貢献していきたい」と言い、NTTデータの下垣氏も「リクルートのように戦略的に脱炭素を目指す仲間を増やしていきたいと思っています」と語ります。

さらに下垣氏は、「スコープ3の排出量を継続的に削減するには、排出量の算定や交換などのルールメイキングが必要なため、リクルートとはルールメイキングも通じて脱炭素の取り組みを促進していきたいです。また、旅行・飲食・美容・住宅など、人々の暮らしに大きく根づいたビジネスを多方面で展開しているリクルートだからこそ、脱炭素社会の実現を牽引いただくことを期待しています」と、リクルートの社会全体へのインパクトに対する期待を語って下さいました。

さらに、NTTデータが運営メンバーとしてICT業界のノウハウ共有や算定ルール作りに参画している国際的な非営利団体Green Software Foundation(注3)に、リクルートグループも加入を検討中(注4)。今後、国際的な算定ルール、またそれに沿った日本のルールメイキングも通じて、脱炭素社会の実現に貢献していくことを目指します。

(注3) グリーンなソフトウェアを提供するための人材、標準、ツール、ベストプラクティスからなる信頼できるエコシステムを提供することをミッションとする非営利団体
(注4) 米国子会社のIndeed, Inc.が代表して加入することを検討中

山西慧(やまにし・けい)株式会社リクルート サステナビリティ推進室 GHG削減戦略プロジェクト

山西慧(やまにし・けい)

株式会社リクルート サステナビリティ推進室 GHG削減戦略プロジェクト

2016年4月に株式会社リクルートキャリアに中途入社し、製造業界・IT業界のエンジニア向けのキャリアアドバイザーを担当。2021年4月から社内異動制度を活用し、サステナビリティ推進室に異動。リクルートの環境推進活動全般に従事。前職では都市銀行で、メーカー・不動産を中心とした法人営業を3年間行う

2023年04月21日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。