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みんなのわがごと「SOGI」を軸にリクルートが日本で取り組むLGBTQ+のインクルージョン

日本では成人の1割がLGBTQ+(注1)などのセクシュアル・マイノリティ(以下LGBTQ+)といわれますが(注2)、そのうち7割以上がその事実を職場ではオープンにしておらず、また約4割が職場で生きづらさを感じているという調査結果も出ています(注3)。日本で事業を展開する株式会社リクルートでは、創業から大切にしてきたバリューズのひとつ「個の尊重」に基づき、DEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)推進に向けた取り組みの一環として、LGBTQ+の方たちも自分らしく活躍できる職場づくりを進めてきました。本ブログでは、世界各地でLGBTQ+の権利向上や啓発のための活動・イベントが開催されるプライド月間(Pride Month)に寄せて、リクルートの取り組みをご紹介します。

(注1) LGBTQ+:セクシュアルマイノリティの総称。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのみでなく、性自認・性的指向が定まっていない方など多様なセクシュアリティの方を指す
(注2) LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」
(注3) Indeed Japan「LGBTQ+当事者の仕事や職場に関する意識調査」

当事者向けの制度を作るだけでは意味がない、大切なのは風土醸成だという気づき

リクルートのLGBTQ+に関する取り組みは、DEI推進の一環として2016年にスタート。2017年には既に慶弔休暇、休職制度(介護・育児)などの福利厚生を同性パートナーにも適用し、2018年からは企業の多様な性に対する取り組みを評価するPRIDE指標(注4)では、5年間連続で最高評価の「ゴールド」を受賞するなど、一見すると順調に進んできたようにも見えます。

しかし初めてPRIDE指標でゴールドを受賞した当時は、制度はあっても利用する人がほぼおらず、実態が伴っているとは言えませんでした。社内では、PRIDE指標を頼りにLGBTQ+の方が入社してくださっても、がっかりされてしまうのではないかという危機感の方がむしろ強く、また東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を控えて、協賛企業の一つとして、国内全体のDEI推進に貢献したいという想いもあり、取り組みを進化させなければと考えていました。

というのも、当時の制度では、まず上長に申請して承認してもらうというプロセスを踏まなければ前述の福利厚生を利用することはできず、そこから起こりえるアウティング(本人の了承なく他者に性自認や性的指向などのセクシュアリティを暴露すること)を恐れて利用しない方が多かったのです。また、法的に認められるものではないので、届け出ることによるリスクがメリットを上回れば、届け出ないという選択肢もあり、今どうしても会社にサポートしてほしいという場合以外は、敢えて申請しないケースも多かったようです。

制度だけあっても、安心して使ってもらえる組織風土がないと意味がないという気づき。そこから、リクルートの「風土醸成」に向けた長い道のりが始まりました。

(注4) PRIDE指標:企業のLGBTQ+への取り組み評価を行う国内最大規模の指標。評価指標は世の中の実態に合わせ常にアップデートされている

従業員の理解を高めた先に待っていたのは、「他人事」という壁

まず2018年に、管理職向けのeラーニング研修をスタートしました。それ以前にも、当事者が語るマネージャー向けの対面研修は開催されていましたが、それをeラーニングに切り替えました。当事者による体験談をもとに研修することは、理解を深める機会とはなるものの、より多くの従業員が考えて内省し自身の行動を変容させる機会にしたいという思いもあり、架空のキャラクターを登場人物にしたeラーニングの形式にすることに。当時、事業部で社外向けに開発されていたLGBTQ+に関するeラーニングを、社内の管理職にまず配信することになりました。

株式会社リクルートのウェブサイト「LGBTQとは」と表示されたスマートフォンの画面

その後、2019年には配信対象を全従業員に拡大。集中して視聴してもらうため、20分という受講時間上限に収まる形で、絶対に伝えなくてはならない内容に絞ったカスタマイズ版を制作し、配信を開始。このコンテンツには、基礎知識に加えて当事者の声やケーススタディも取り入れるなどの理解を促す工夫がなされており、受講率は80%以上、受講後理解度は約100%となっています。また、このeラーニング受講の最終画面で希望すればLGBTQ+ Ally(アライ、LGBTQ+を理解し支援したいと思う人)(注5)グッズを贈る企画も実施しました。このほかにも、ワンストップでLGBTQ+関連の情報がまとめて得られる啓発サイトの設置、ワークショップ・セミナー開催などを通して従業員理解の促進を図ってきました。

株式会社リクルートが配布したAllyグッズのキーホルダー

Allyグッズとして希望者に配布したキーホルダー。キーホルダーを2つセットにして送ることで、ひとつを自分用に、もう一つを誰かに渡してもらい、ALLYを広げる行動を後押しする

これらの取り組みを通じて多様な性への理解度を高めることはできたものの、誰もが「自分事」として考え、行動できるまでには至っていませんでした。現在DEI推進室の島崎は、「今後はもう一歩踏み込んで従業員全員が自分事にしていくためのアプローチが必要だ」と言い、「eラーニング受講後の感想に『自分の部署にはいないから、こういう人もいるんだと勉強になった』などというコメントもありましたが、本当は自分の周りにもいるけど自分が知らない、気づいていないだけじゃないかという意識を持つこと、逆に言えば当事者が『いる』ことが当たり前という知識・意識醸成まで、まず持っていかなくてはいけない。周囲の人たちにとってはまだどこか他人事であることも課題です」と、周囲の自分事化の重要性を強調しました。

(注5) ALLY(アライ):LGBTQ+の人がどのような思いを抱えているのかを考え、行動する人のこと。当事者の人もそうでない人も、誰もがALLYになれる。

SOGIの概念を軸に、周囲を変え、多様な個が尊重される組織風土に

実際、2022年にリクルート社内で実施した調査では、未だにLGBTQ+当事者が自身の性自認・性的指向に関して「日常的に嘘をつかざるを得ない」状態が続いており、さらに全体の約30%がLGBTQ+に関わる残念な体験に遭遇していること、そしてそれは日々の働くシーンにおいても発生していることが明らかになっています。このような背景もあり、近年は、社内のコミュニケーションもeラーニングのコンテンツも性的指向(Sexual Orientation)・性自認(Gender Identity)に関して全ての人が持つ多様な性のありかたを包含する概念「SOGI(読み方:ソジ)(注6)」を軸にチューニングしています。DEI室でLGBTQ+関連の取り組みを担当するチームを率いる大石はその意図について、「SOGIはすべての人に当てはまる概念で、誰もが当事者。リクルートはあらゆるSOGIを尊重する会社なのだということを、皆が理解するようにしていきたい」と説明し、島崎も「個の尊重がベースにある会社ですから、素養はあるはず。しかし、無自覚なまま誰かに生きづらさをもたらしてしまっているケースもまだまだ散見されています。誰もがSOGIについてきちんと学んで、周囲にも働きかけられるようになっていくことが大事だと思う」とつけ加えました。

今年8月には、「SOGI」にまつわる社内コミュニケーションのあり方についてより深く学べる新しいeラーニングプログラムの展開も予定しているリクルート。今後は、社内で発生する多様な性にまつわるネガティブな体験をなくしていくことや、LGBTQ+当事者がカミングアウトを自己決定できる職場での心理的安全性の担保を重点テーマに含め、従業員の多様な個性が尊重され、自分らしく活躍できる環境の実現に向けた取り組みを強化していきます。

(注6) SOGI:Sexual Orientation and Gender Identityの頭文字。性的指向(好きになる性)と性自認(自分の心の性)を包括して表す概念であり、全ての人が持っているもの

島崎紘一(しまざき・こういち) 株式会社リクルート スタッフ統括本部 人事 DEI推進室 DEI推進部 支援推進グループ

島崎紘一(しまざき・こういち)

スタッフ統括本部 人事 DEI推進室 DEI推進部 支援推進グループ

2014年に入社、リクルートマーケティングパートナーズにて結婚情報誌ゼクシィの営業に携わる。2022年よりDEI推進室に異動。現在支援推進GのGMを務める

大石雄大(おおいし・ゆうた)株式会社リクルート スタッフ統括本部 人事 DEI推進室 DEI推進部 支援推進グループ

大石雄大(おおいし・ゆうた)

スタッフ統括本部 人事 DEI推進室 DEI推進部 支援推進グループ

2010年に入社、リクルートコミュニケーションズなどで情報誌の印刷・用紙調達購買などの業務に携わる。2023年からDEI推進部を兼務し、LGBTQ+に関する取り組みを担う現グループのチームリーダーを務める

2023年06月27日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。