2023年6月、株式会社リクルートホールディングスは、Stitch Fixの創業者のカトリーナ・レイク氏を社外取締役に迎えました。カトリーナは、2017年に当時女性としては最年少で米国ナスダック市場上場を果たした起業家。アメリカ・シリコンバレーのテクノロジー業界で活躍する彼女が、なぜリクルートグループの経営に参画することを決めたのか?その理由を聞きました。
日本で60年以上、何度も事業変革を遂げてきたリクルートグループに見出した機会
リクルートホールディングスの社外取締役という役割は、米国でのテクノロジー企業の経営経験を活かしながら、私自身の好奇心に沿った新たな挑戦ができる絶好の機会と捉えています。私は2011年、ハーバード・ビジネス・スクール在学中に、パーソナルスタイリングサービスを提供するStitch Fixを起業し、10年間CEOとして事業経営にあたってきましたが、2021年に会長に退いた頃から、新たな挑戦の場を探すように。特に自身のルーツがある日本で、日本企業が得意とする長期視点のコーポレートガバナンスを学べる機会があればと思っていました。
その望みを叶えるうえで、リクルートホールディングスは、私にとって最高の選択肢ではないかと当初から注目していました。雇用主として『Indeed』や『Glassdoor』のサービスを利用していたこともあり、リクルートグループのHR(人材)事業は身近で価値を感じるものでしたし、「人」を中心に据えてマッチングサービスを提供するリクルートグループの世界観は、業界は違えどStitch Fixと共通するものだったので、強く共感するものがありました。
また、企業の半数が創業100年以上(注1)の日本にあって、長期視点で経営に取り組むリクルートホールディングスのコーポレートガバナンスに携われることも魅力でした。リクルートホールディングスは、創業以来60年以上にわたって、従業員一人ひとりの情熱を尊重し、「起業家精神」を培う企業文化を基盤に、何度も事業変革を成功させ、現在では世界60ヶ国に展開するグローバル企業となったユニークな企業。そのバリューズにも共感していますし、この先も数十年にわたって続いていくであろうリクルートグループの変革と事業成長の一助になれればと思ったのです。
(注1) 日経BPコンサルティング・周年事業ラボ 2022年版100年企業
直近の事業成長とソーシャルインパクト創出の機会はAI活用に
リクルートグループの「人」を中心に据えたマッチング、さらにリクルートグループが蓄積してきたマッチングに関する良質で膨大なデータには、事業成長とソーシャルインパクト創出の両方を実現する大きなポテンシャルを感じています。
私が起業したStitch Fixも、AIを活用することで、人々の暮らしをより良いものにしたと思っています。従来、スタイリストと言えば、ハイエンド市場の衣服を扱う仕事でしたが、Stitch Fixのプラットフォームができたことで、よりカスタマーニーズが高い手頃な価格帯の洋服のスタイリング提案という新たな市場が生み出されました。つまり、スタイリストには新たな仕事が生まれ、ユーザーは手頃な価格でスタイリストを利用できるようになったのです。
リクルートグループについても、同じことが言えるのではないでしょうか。例えば、Simplify Hiring戦略が今後さらに推進されていけば、AIの活用によって採用プロセスの効率化が進み、求職者は今よりずっと簡単により速く自分に合った仕事を見つけることができるようになるし、雇用者はより効率的に求める人材を採用できるようになるでしょう。自分にぴったりの仕事に早く就けることは働く人の暮らしの質を上げますし、本業に充てられる時間が増えることは雇用主にとってありがたいことだと、かつての自分を振り返っても思います。
長期的な成長のカギは、従業員一人ひとりの「起業家精神」と「個の尊重」の企業文化に
私自身が非常に大事にしてきた「起業家精神」は、リクルートグループが創業以来大切にしてきた企業文化の一つで、長期的な視点で見ると、これが成長のカギになると考えています。私は28歳の時にStitch Fixの事業を立ち上げてから、起業家として、時にはリスクを負ってでも自分の情熱に賭けることを大事にしてきました。リクルートグループの皆さんからも同じスピリットが感じられますし、起業家精神を持った個人の情熱やアイディアに賭けて何度も大胆な事業変革を実現し、成長を遂げてきたのがリクルートグループの歴史そのものだと思っています。
リクルートグループは、長年にわたって有効性が実証されてきたこの企業文化をベースに、今後も何十年、何百年と変革を続け、成長していくと信じています。私もこれまでのCEOとしての企業経営の経験や起業家精神、AIやデータサイエンスを活用したテクノロジー事業の知見をフルに活かして、その成長に貢献していきたいと思っています。
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Katrina Lake
Katrina Lake(カトリーナ・レイク)
株式会社リクルートホールディングス 取締役(社外・独立役員)
2005年 Parthenon Group, LLC(現 EYパルテノン)に入社。2007年 Leader Ventures, LLCを経て、2011年に米国と英国中心に展開するオンラインパーソナルスタイリングサービスを提供するStitch Fix, Inc.を設立しCEOに就任。2017年には同社をNASDAQに上場。当時NASDAQ上場史上、最年少の女性CEOとなった。グローバルに展開するフードデリバリーサービスを提供するGrubhub, Inc.や化粧品ブランドのGlossier, Inc.といった企業の社外取締役を務めるなど、グローバルに展開する企業経営に関する豊富な知見と経験を持ち、現在はStitch Fix, Inc.のExecutive Chairperson of the Boardを務める。2023年より当社社外取締役に就任