Indeedは2023年9月20~21日の2日間、米国ジョージア州アトランタにおいて、働き方の未来に備えるための実践的な知見が得られるイベント「FutureWorks」を開催しました。今年はAIが仕事や働き方に与える影響について、CEOのChris HyamsをはじめとするIndeedのリーダーたちがプレゼンテーションを実施。オンラインでの視聴を含め、多くの企業人事関係者が参加しました。この記事では、そのエッセンスをお伝えします。
AIと“仕事”の未来ーCEO Chris Hyamsの目指す世界
まず最初にCEOのChris Hyamsの基調講演でスタート。「We help people get jobs.」というミッションを掲げるIndeedが、昨今話題の「AI」に対してどのような姿勢で向き合っているか、語りました。
「AIに対して、懸念もあるが、期待も大きい」と語るChris。具体的な懸念の筆頭として挙げたのは「バイアス(偏見)」。人間が創り出したデータを元にしているAIには、人間が持つバイアスや不平等をそのまま反映し、さらには助長してしまう可能性がある。一方で、責任を持った使い方をすれば、結果的に採用における不平等の解消に一役買う可能性も併せ持っていて、その実現に向けた道筋も見えてきたとのこと。続いて懸念として挙げたのが「既存の仕事への影響」。長い目で俯瞰して見れば、テクノロジーが私たちの働き方や暮らしをより良く、より人間らしくすることはほぼ確実。とはいえ、自分の仕事がAIに取って代わられてなくなってしまう個人にとって、その影響は大きなものだ、と語りました。
一方の期待については、農家がAIを使って病虫害防除に成功したり、AIを搭載した脳インプラントによって半身不随の男性の歩行が実現したり、インドの「チャンドラヤーン3号」がAIによって月の南極への着陸に成功したことを例に、これらAIの潜在的な力の大きさは、仕事探しの分野でも発揮されるものだと述べました。実例として、IndeedのAI求人レコメンド機能を紹介。AIを活用して一人ひとりの求職者に合いそうな仕事をフィードに提案したところ、求職者が自分で検索した求人よりも、55%も高い割合で応募につながっているという結果を挙げました。また、ボタンをクリックしていくだけで求人票を作成できる機能が既に実用化されていることや、企業が使用する採用管理システムをより使いやすいものにしていく予定があることも紹介しました。
最後に、IndeedはAIを活用しつつ、仕事探しをより簡単に、より速く、より人にやさしくすることを目指していると語ったChris。「私たちは、人間にとって代わる採用ロボットを作ろうとしているのではありません。アイアンマンスーツを着たトニー・スタークが空を飛んだりレーザービームを出したりできるように、AIを活用した採用担当者が、より質の高い求人票を書いたり、効率的に求職者向けのメッセージを作成したりできるようにしたいのです」と実現したい世界観を語りました。そして「Indeedは皆さんとともに、人間らしさを採用プロセスの中心に据えながら進化していくことをお約束します。仕事探し・採用の世界に改善の余地があることは皆さまご承知の通りです。よりよい“仕事”の未来をともに築いていきましょう」と、参加者に語りかけました。
さらに詳しい内容はIndeed Japanのブログをご覧ください。
Indeed CEOのChris Hyams
AIの「バイアス」をいかに取り除くか
Senior Vice President of Environmental, Social and Governance (ESG)であるLaFawn Davisのセッションでは、AIにまつわるバイアスをどう捉えどのように取り組んでいるかについて掘り下げました。
何も手を打たなければAIは現実世界の人間のバイアスをそのまま反映してしまいます。企業の人材採用におけるアルゴリズムもまた例外ではありません。「とあるネット販売大手のグローバル企業では、機械学習が過去の採用バイアスを取り込んでしまい、女子大出身の応募者にとって不利な男性優位なアルゴリズムになっていた、ということがありました」と実例を紹介しました。
LaFawnは、AIがバイアスの低減に有用となる可能性 についても強調しました。Indeedでは2020年から、責任あるAI活用(英語のみ)の徹底を目指してAIの活用方法とその倫理的側面について検討を重ねてきました。Indeedのプラットフォームでは、今やあらゆるところでAIが活用されています。LaFawnは、「Indeedは、公平な採用の実現を念頭に置いて作られています。採用プロセスをインクルージョン(包摂性)の観点で評価し、再設計するサイクルを繰り返し、求職者が労働市場で直面しやすい、犯罪歴、障がい、学歴の有無といった障壁を低減するために、試行錯誤しながら改良を続けています」と語りました。
なかでも現在力を入れているのが「学歴の壁」の低減です。例えば米国では、何百万人もの求職者が学士号がないために書類審査で一律不合格になっているのです。現実には、スキルを基準に採用された人は、学歴だけをもとに採用された人よりも、仕事で成果を出す可能性が5倍高い、というデータもあります。そこでIndeedでは、職業訓練など、大学以外のルートでスキルを習得した求職者と企業のマッチングを推進するSkill Connect(英語のみ)というサービスを提供しています。また、現在開発中の採用担当者向けのAIツールでは、学歴でふるいにかける(Screen out)のではなく、履歴書の記載内容から業務の遂行に必要なスキルを特定し、自動的に候補者リストに上げる機能(Screen in)が検討されています。
スピーチの締めくくりに、LaFawnはAIと人の関係性に触れました。「人事はその名の通り『人』が大切で、採用の合否判断の場面では特にその重要性が増します。71%ものアメリカ人が、AIが合否判定をすることに反対していることも分かっています。AIとともにより良い仕事の未来をつくるには、まず行動を起こすことが重要です。皆で協力すれば、偏見や障壁に直面している求職者も誰一人取り残さずに済みます」と参加者に協力を求めました。
さらに詳しい内容はIndeed Japanのブログをご覧ください。
IndeedでSenior Vice President of ESGを務めるLaFawn Davis
AIの「既存の仕事への影響」は?
「既存の仕事への影響」に焦点を当てたのは、Indeed Hiring LabのChief EconomistであるSvenja Gudellのセッション。このプレゼンテーションが行われた当日の朝に発表されたばかりの『AI at Work Report』の内容も引用しながら、AIが私たちの仕事に与える影響について話しました。
米国のIndeed上の5,500万件以上の求人情報と2,600以上のスキルについて分析した結果、ほぼすべての仕事が生成AIにより一定の影響を受け、特に約20%が大きな影響を受けることが明らかに。生成AIの影響が最も少ないのは運転手で、逆に最も影響を受けるのはソフトウェア開発者、リモートワーク可能な仕事はAIの影響を受けやすい、といった特徴的な結果も。ただし、「生成AIが役立つのは、反復可能なタスクや要約が主なもので、クリティカルシンキング、共感、リーダーシップなど、対人コミュニケーションに必要なものを代替することはできない」と、生成AIが人間に取って代われるレベルにはまだ至っていないことも明かしました。
Indeedが米国企業の採用担当者に対して行ったアンケートでは、87%が「何らかの形でAIを業務に使っている」と答える一方で、求人全体における生成AIに関する求人数は1%にも満たないこともIndeedの別の調査で分かっています。これは、人とAIの在り方を示唆するものでしょう。「知識労働者は、AIをツールとして活用することで生産性を向上させ、不要な作業をなくして、仕事のより面白い部分に集中することができる」とSvenja。
「変化は間違いなく起きて、しかもその変化の影響は大きなものになると思っています。失われる仕事も あるでしょうが、歴史から学べることは、このテクノロジーの進化の過程で、数多くの新しい仕事も生まれるということです」と、前向きな側面を強調しつつプレゼンテーションを終えました。
さらに詳しい内容はIndeed Japanのブログをご覧ください。