『ホットペッパービューティーワーク』は、リクルートが2023年2月に日本でスタートした、美容業界で働きたい人たちの就職・転職をサポートする人材マッチングプラットフォームで、既に約3万ものサロンに利用されています(注1)。美容分野における⽇本最⼤規模の販促マッチングプラットフォームとして利用者とサロンをつないできた『ホットペッパービューティー』が、人材マッチングサービスに進出した背景や狙いについて、リクルートのビューティープロダクトマネジメントユニットでVPを務める島村遊に話を聞きました。
美容業界で「採用」は「集客」に次ぐ大きな課題
リクルートが行った調査によると、最も多くのサロン経営者がサロン運営上の課題として感じているのは「集客(82%)」でした。これについてリクルートは、「日本中の街にBeauty Smileを。」というビジョンを掲げ、2000年のフリーペーパー創刊から始まり、美容分野に特化した販促プラットフォーム『ホットペッパービューティー』としてオンラインへの拡大を経て、2007年にはオンライン予約も可能なマッチングプラットフォームに進化するなど、美容事業開始当初からさまざまな形で取り組んできました。
この集客に次ぐ大きな課題が「採用(42%)」です。人材不足や定着率の低さは、美容業界が長年抱えている課題で、これに対して「業界に携わって20余年の経験を持つリクルートだからこそ、できることがあると考えてきた」と島村は言います。さらに、「実は以前から、求職中の美容師の方たちが、自分に合う職場かどうかを確認するために、サロン利用者向けの『ホットペッパービューティー』を見ているという声はよく聞いていた」と言い、販促マッチングプラットフォームの『ホットペッパービューティー』が、 美容業界での就職・転職活動に役立つ情報を備え、既に活用されていることも明らかになっていました。こういった背景が、美容業界に特化した人材マッチングプラットフォームの構想につながりました。
より多様な人材が、理想のサロンに出会って、イキイキと長く働き続けられるように
こうして2023年2⽉にサービス提供を開始したのが、美容業界の⼈材マッチングプラットフォームの『ホットペッパービューティーワーク』です。
サロンのスタッフや、人気メニュー、評価分布、口コミ、客層等が『ホットペッパービューティー』から『ホットペッパービューティーワーク』の求人ページに⾃動で連携される
求職者は、『ホットペッパービューティーワーク』を使えば、求人検索から店舗情報の収集、応募までをワンストップで完結できます。特に店舗情報の収集について島村は、「求職者が知りたいリアルを届ける機能を実装しました。具体的には、サロンのスタッフや、人気メニュー、評価分布、口コミ、客層等が『ホットペッパービューティー』から⾃動で連携され、求人ページ上で見られるようになったのです。もう求人サイトと『ホットペッパービューティー』の間を行き来する必要はありません」とその利便性を強調しました。
一方のサロン側については、「求人広告の作成は、日々のサロン運営に利⽤頂いているリクルートのサロン向けSaaS『サロンボード』上でできますし、さらに『ホットペッパービューティー』に掲載している情報は重複して⼊⼒する必要がありません。求人広告作成にかかる手間を大幅に削減でき、これまでよりも圧倒的に速く簡単に求人掲載ができるのです」と、採⽤プロセスの効率化をメリットとして挙げました。
24時間予約 受付、予約の⼀元管理、顧客管理、レジ機能、業績の集計・分析などサロン運営に必要な機能を数多く備える『サロンボード』から、『ホットペッパービューティーワーク』の求⼈ページの作成管理ができる
さらに、「求職者が勤務先を選ぶ上で重視すると⾔われている情報を網羅的かつリアルに伝えることは、採用のミスマッチの減少、さらには従業員の定着率向上にもつながると考えています」と島村。また、2024年5月にはスカウト機能もリリースしています。これは求職者が登録したレジュメ(プロフィール)をもとに、サロンが直接オファーを送ることができる機能で、求職者のスキルや経験とサロンが求める人材要件のミスマッチが起こりにくく、より速く効果的な採用を実現できる可能性が高まります。
個人の技術力が適正に評価される、やりがい溢れる美容業界へ
『ホットペッパービューティーワーク』は、こういった人材マッチングのスピードと質の向上に加え、業界全体の構造的な課題に対する取り組みも進めています。
まず、日本では美容業界を離れてしまう人が多く(注2)、その大きな原因の一つに「給与の低さ」があります(注3)。米国を含めた海外では、施術者の技術力によって施術料金が大きく変わるのが普通ですが、日本は料金レンジが非常に狭く、技術力が施術料金や給与に反映される構造にな っていません。これに対して島村は、「例えば、利用者が求める施術のバリエーションや施術者の評価を可視化するなど、頑張って技術を身につけた人にとってやりがいのある業界の実現に向けて、業界全体が進化していくきっかけをリクルートが作っていけたら」と抱負を語りました。
また、美容業界で活躍するポテンシャルを持った人材の参入やカムバックの促進による「人材プールの拡大」にもアプローチしていきたいといいます。具体的には、「業界未経験者」「他業界から美容業界にカムバックしたい人」「業界内の他分野でカムバックしたい人」「長いブランクを経て業界にカムバックしたい人」など、これまであまり注目されてこなかった層に向けた取り組みです。島村は、「例えば、美容師の国家資格は持っているものの業界は未経験という人を採用して育ててくれる美容サロンも増えてきてはいますが、その実態はあまり知られていません。そういったサロンと未経験の求職者とのマッチングも促進していきたい」と説明しました。
「働きたい人が理想のサロンに出会って、いきいきと長く働き続けられる環境であれば、サロンの利用者の皆さんもより満足度の高い施術を受けられる。その結果、サロンのリピート率や利益も向上し、サロン運営が安定するという好循環が生まれます。従業員、利用者、サロンの『三方良し』が実現できると考えています」と最後に島村は語りました。
リクルートの島村 遊
(注1) 2024年6月時点
(注2) 出典:国税庁ホームページ「令和2年分民間給与実態統計調査」
(注3) 出典:厚生労働省ホームページ「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)」
島村 遊
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダ クトマネジメント統括室 販促領域(旅行・飲食・ビューティー)ビューティープロダクトマネジメントユニット VP
IT企業に新卒入社し、エンジニアとしてキャリアをスタート。その後2015年にリクルートに中途入社。ビューティー領域で『サロンボード』、飲食領域で『レストランボード』などのクライアント向けプロダクトの企画を経験後、2018年4月に飲食クライアントソリューショングループのGMに任用。その後飲食プロダクトマネジメントグループGMを経て、2024年4月より再びビューティー領域に戻り、現職に