2019年、Indeedは、職場の幸福度に関する大規模調査プロジェクトをスタート。1年間の開発とデータ収集期間を経て、「The Work Happiness Score(ワーク・ハピネス・スコア)(注1)」を米国で発表しました。数ヶ月後にはカナダ、続いてUKマーケットのデータも取り込むことでプラットフォームはさらに拡大。世界規模のデータを基に、企業とそこで働く人がより良い職場環境を築くためのヒントを提供することを目指した本プロジェクトは、仕事に満足する人を増やすというIndeedのコミットメントとも連関しています。
(注1) リンクから英語サイトに遷移します。

Janeane Tolomeo Senior Manager, Work Happiness ESG Lead

Rae Albee Senior Program Manager, Work Happiness
幸福度を科学的に測定する仕組み
IndeedのSenior Manager、Work Happiness ESG Lead であるJaneane Tolomeoは、プロジェクト化の背景をこう振り返ります。「前々から、人々が仕事に期待することが変化しているとデータから分かっていました。給与や柔軟性は求職者にとって以前から重要な要素でしたが、それ以外のウェルビーイングの要素―ポジティブな職場環境、深い信頼関係、強い帰属意識などが、人々の職場選びに影響を与え始めていたのです。そこで私たちは、求職者がそうした情報を簡単に見つけられるツールを作ろうと考えました」
構想が進むにつれ、チームメンバーたちは、核となるのは「幸福」であることに気が付きました。これは非常に主観的な概念で、定義したり測定したりするには、最先端の学術的知見が必要でした。そこで、カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授で、幸福学の専門家であるSonja Lyubomirsky博士をIndeedへ招へい。さらに、オックスフォード大学の経済学教授で、ウェルビーイング研究センター所長でもあるJan-Emmanuel De Neve博士もプロジェクトに加わりました。ふたりは、働く人たち一人ひとりが職場の幸福度を評価できる15の質問項目を策定。項目は公平な給与や上司のサポート、個人の尊重、帰属意識、インクルージョンなどからなります。各項目は5段階(5は「非常にそう思う」)評価で、カテゴリーごとに点数を算出。一定の回答数が集まるとワーク・ハピネス・スコアが集計され、そのスコアは企業クライアントに共有されるとともに、Indeed.com上の企業プロフィールの横に表示されます。スコアは固定的なものではなく、多くの回答が集まるほど、その企業の実像に近い最新の企業文化として反映され、変動していく仕組みです。
「データの信ぴょう性を担保するため、信頼に足る学術研究をベースにした基準を作る必要がありました。しかしそうしたからこそ、労働市場にインパクトを与えられるプラットフォームとなったのです。求職者は自分と方向性の合う企業を見つけることができますし、雇用主も自社の企業文化について貴重な知見を得ることができます」とJaneane。550万人を超える働く人たちが職場の幸福度調査に協力下さったおかげで、この調査は世界で最大規模のものとなりました(注2)。
(注2) 2021年Indeed調査による。

幸福度データでビジネス上の競争力も高められる
ここ数年、仕事に対する人々の考え方が変化しています。コロナ禍とデジタル化の影響で、不幸せな気持ちがもたらす悪影響が注目されていますが、同じことが仕事の世界でも起こっているのです。
例えば、UKの労働者の36%は自分の仕事について「幸福でない」としており、カナダでも「職場では概ね幸せを感じている」と答えたのは求職者の48%にとどまっています。Indeedはこういったデータをさらに詳しく調べ、企業がどのような点で幸福度を上げる機会を逃しているのかを把握するサポートをしています。このようなインサイトがあれば、企業は改善すべき点に対策を打てるため、働く人のモチベーションと生産性を高く保つことができ、さらには人材市場で優秀な人材を惹きつけることにもつながります。
Janeane は言います。「企業はこのワーク・ハピネス・スコアをベンチマークにすることができます。幸福にどのような側面があるかを知ることは、生き生きと働ける環境を作ることに役立つものです。幸福度を上げるための施策にはお金をかける必要がないものもたくさんありますから、どんな企業でも実行できます」
IndeedのSenior Program ManagerであるRae Albeeも、幸福度データの活用可能性についてこう語ります。「データをもとに個社別のカスタム・レポートを作成し、企業クライアントに提供しています。働く人の幸福度における企業の強みはもちろん、弱みも示す統計データです。強みを確認するのも素晴らしいことですが、弱みをあぶり出すことは大きな改革に繋がります。レポートにはマーケットの全体像も記載されており、自社の状況を理解するだけでなく、同業他社との比較もできます。あらゆるレベルで真の競争力を獲得することができるようになるのです」
求職者が愛せる仕事に出会えるように
IndeedのミッションはWe help people get jobs. これを実現する過程で、働きやすいだけでなく幸福度も高い職場に求職者が簡単に出会えるようにしたいと考えています。しかし概して、入社前にその会社の文化を知るのは難しいものです。ワーク・ハピネス・スコアはこの点を見える化し、求職者が自分の価値観に合う就職先に出会えるようにするものです。これは、必ずしも「最も幸せな」企業を探すためのものではなく、むしろ求職者が自分と似た価値観を持つ企業に対して、期待値調整をしやすくするものです。
前もってこのような情報を得られれば、職業人としても個人としても自分にフィットする職場で働くことができ、もっと仕事に満足できるようになります。幸せな人は、より自信にあふれ、忠実で、生産性が高く、彼らの成功は職場ひいては社会全体にまで影響を及ぼすでしょう。
「仕事は私たちの人生にとって大きなものです。人生の3分の1近くを仕事に費やしているのですから。仕事は人生全体の満足度、そして仕事以外の人生の3分の2への心持ちにも影響します。私自身も、どんな仕事をしていた時も、ヘアサロンで働いていた時もマーケティング担当になった今も、雇用者の自分への接し方に大きく左右されてきました。自分の能力に気づき活躍できた職場環境もありましたが、全く逆のことが起きてしまった環境もありました」とJaneaneは言います。
Indeedのデータによると、97%の人が職場で幸福を感じることは可能だと考えており、ワーク・ハピネス・スコアがその実現を後押しするものになるでしょう。また、幸福度は特定の業界だけが高いのではなく、どの分野にも素晴らしいスコアを獲得している企業があることがデータから分かっています。求職者にとっては、業界をまたいだ転職をしても満足度が下がるわけではないということが証明されているのです。むしろ、自分の経験、夢、野心に沿って賢明な決断をし、より深い結びつきを感じられる仕事に就くことが可能なのです。
「幸福を理解すればするほど、全体の中での幸福の優先順位がより高くなります。それはワクワクすることですよね。この研究は、私自身の仕事の幸福とは何かを理解するきっかけにもなりましたし、皆さんにとってもそうなるといいなと思っています」とはJaneane。
IndeedのDirector of User Experienceで本プロジェクトのプロダクト・パートナーを務めるJan Rojcekもこう付け加えます。「この取り組みとその可能性に今は夢中です。ワーク・ハピネス・スコアは、人々が自分の目指すものや価値観に合った、本当に良い仕事を見つけ、その仕事に就く可能性を高めるものです。求職者に対して、これまでになかったデータに基づいて仕事を選ぶ術を提供したという意味で、革新的なものです。さらには企業も、Indeed上そして将来的にはすべての人材マーケットにおいて、優秀な人材を獲得するため切磋琢磨するようになるので、最終的にはより良い職場と求職者の幸福につながっていくでしょう」
人々がいきいき働ける仕事の今とこれから
Indeedとともにワーク・ハピネス・スコアを開発し、カギとなる項目を定義したオックスフォード大学経済学部教授でウェルビーイング研究センター所長のJan-Emmanuel De Neve博士は、次のように語ります。「これまで通り職場のウェルビーイングは重要ですが、新型コロナウイルス感染症の流行や新しい働き方の広がりによって、私たちはいわゆる『大いなる気づきの時代(Great Realization)』に入りました。給与明細だけでなく、職場が自分たちのウェルビーイング全般にどう影響するかをより慎重に検討するようになっています。Indeedのワーク・ハピネス・スコアは、業界や業種、国を超えて、働く人たちが職場でどのように感じているかを測定し把握可能にするという意味で、飛躍的な進歩を可能にするものです。人々が職場でどの程度幸せを感じているかを継続的に追跡し、職場の幸福度を上げる要素についてのインサイトを得ることもできます。技術の進歩は仕事の本質を変えつつありますが、ワーク・ハピネス・スコアは、こうした技術的進歩を活用して職場の幸福度を向上させることが可能か、またそのためにはどうすればよいかまで示すようにデザインされています」
このプロジェクトはまだ始まったばかりですが、データの収集範囲を拡大し、ワーク・ハピネス・スコアを全世界に展開していく予定です。
「ワーク・ハピネス・スコアは、ポジティブ心理学に基づいて設計されています。質問項目は、普遍的な性質のものばかりです。ただし、それがどのように受け止められ、どのように活用されるかは、マーケットによって異なります。幸せになりたいという基本的な欲求は誰もが持っていますが、それが国や文化によって異なった見え方をするのです。Indeedがこのデータセットをより大規模なものにしていく中で、グローバルに統計分析し、世界の傾向を読み取る機会に恵まれる日も来るでしょう」とRaeも付け加えます。
Indeedでは、このプロジェクトは生産性や満足度を向上するだけでなく、人々の仕事にまつわる意思決定のあり方を変える可能性があると考えています。
Raeは今後の展望を語ります。「子どもの頃、『大人になったら何になりたい?』とよく聞かれますよね。私たちは、この質問を現代の事情にあわせて、『仕事をしてどういう気持ちになりたい?』に改めていきたい。自分で選んだ仕事をして素晴らしい気分になれたら、仕事においても人生においても非常に前向きな一歩になりますから」