山﨑:一方、大手メーカーの人事担当者の反応は渋い。「山﨑さん、話聞いてた? うちが欲しいのは経験者だよ」と。そこで、取引先の現場に実際に出向いて、文系の未経験者が採用されるための人材要件を、メンバーたちで直接掴みに行きました。すると意外な声が拾えたのです。「技術力が高くて欠勤しがちな人より、スキルは人並みでも毎日出社して仕事にやる気がある人のほうがいい」。エンジニアでもヒューマンスキルの方が大事という意見は、自分たちにとっても目から鱗でした。
林田:「解」は現場にあると思っています。この現場へのヒアリング結果をまとめた資料(「お客様の声100」)は、クライアントを理解するためだけのものではなく、営業が企業の人事採用部門の方への提案する際の切り口にもなっています。
山﨑:「即戦力でなくても良いから早く人が欲しい」という声も聞こえてきました。経験者を募集しても、採用配属されるまでに半年以上かかるケースも散見されている。であれば、スピーディに提案できる、やる気がある未経験人材の派遣は大きな価値提供になるのではないか、と考えたんです。
こうして誕生したのが、未経験を採用ののちに育成していくという新たなモデルでした。クライアント企業のひとつ、グローバルに展開する住宅機器メーカーの開発担当者はこう印象を語ってくれました。
「商品開発を担う私たちの部署では、新商品・新機能の企画から量産投入まで広範囲の工程に関わるため、協働者はさまざまです。そのため、特定の技術分野に特化したメンバーだけでは業務は成り立たちません。技術の分かる文系のメンバーがコミュニケーションや管理面を補ったり、製品仕様の検討やアイデア会の場面に参加することで、異なる着目点からの素朴な疑問が核心をつき、部署のアイデアの幅が拡がることもあります。エンジニアとして一人前になるための基礎知識を業務と並行しながら身に付けるのは、簡単なことではありませんが、他分野への挑戦が成功するよう、親心を感じる継続したサポートを期待します。」
林田:クライアントのなかに育成の仕組みがあれば、必要スキルが無い人も働けると気づいたのがこのサービスの原点です。実際に、「派遣先で研修を受けて、社内資格が取れました」と、喜ぶエンジニア社員の声を聞くと、育成型採用サービスの成功への手応えを実感します。とはいえ、「未経験だけど就業できる」ということはまだスタートラインです。ここで得た就業経験が、カスタマーの成長につながり、次の就業先や人生に役立つように後押しすることが今後の目標です。どんな時でも、カスタマー、クライアントと向き合い、最適の「解」を探しながら、サービスを進化させ続けたいと思います。
山﨑:カスタマーの「なりたい」を叶えるプラットフォームを目指して取り組んできました。文系の応募者が技術職として、メーカーに採用されることは難しい。ですが「派遣」という形態でエンジニアとして就業する機会を得ることで、できることが増え、得意が見つかる。機会があることによって未経験のことに挑戦する人が増え、さらにそれが業界全体に伝播し、カスタマー・クライアント双方にとってスキルに捉われない「新しい挑戦」が自然なことになるように尽力していきたいです。
林田 順司(はやしだ じゅんじ)
スタッフサービス エンジニアリング事業本部 営業企画部
2001年スタッフサービスに入社。オフィス事業本部でマネージャーを経験後、08年エンジニアリング事業本部に異動し、営業部長を務める。09年より愛知へ。人事や労務管理をするHR機能のマネージャー、中部エリアの営業部長を経て、14年本部HRセンターの責任者に。18年より現部署部長
山﨑 亮(やまさき りょう)
スタッフサービス エンジニアリング事業本部 中部・東海ブロック
2008年スタッフサービスに入社。大阪支社で営業としてスタートし、茨城・愛知と大手メーカーを担当するエリアマネージャーを経験。17年より営業部長として現部署に。新卒採用コンテンツの制作にも携わる