リクルートワークス研究所は、日本で20年以上、「人」と「組織」に関する研究を続けてきたリクルートグループの研究機関で、およそ5年に1度、未来社会のシミュレーションを実施し、働くことの未来像を提示しています。今年は『未来予測2040 労働供給制約社会』を発表し、国内の主要メディアで取り上げられるなど多方面で話題となっています。今回、なぜ今このテーマに着目したのか、予測からどのような日本の未来が見えてきたのか、リクルートワークス研究所の主任研究員である古屋星斗の解説を交えてご紹介します。
日本の労働市場を見つめてきたリクルートワークス研究所が2040年未来予測を発表し社会に警鐘を鳴らす
リクルートグループの研究機関のひとつであるリクルートワークス研究所は、「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会の創造」を使命に掲げ、1999年に設立。日本の労働政策、労働市場、組織・人事、個人のキャリア、人材ビジネス、世界の雇用・労働を主な研究領域とするシンクタンクとして、20年以上にわたり広く情報発信・提言活動を行ってきました。調査やレポートには誰でもアクセスでき、求職者、企業、メディアのみならず、政府機関でも活用されるなど、幅広い信頼を獲得しています。
リクルートワークス研究所は、およそ5年間隔で働くことの「未来像」を提示しており、今回で4回目となります。2023年のレポートでは、日本の人口動態統計をもとに2040年の労働需給をシミュレーションし、日本が「労働供給制約社会」になると警鐘を鳴らします。プロジェクトリーダーをつとめたリクルートワークス研究所主任研究員の古屋は「これは、単なる人手不足論ではありません。日本社会が生活を維持するために必要な労働力を供給できなくなる可能性があるということです。この背景にあるのは人口動態です。2044年までは65歳以上の高齢人口が増え続け、一方で15~64歳までの現役世代が2040年まで急激に減少していくのです。結果として起こるのは、労働の担い手となる現役世代の割合が不足する社会です。我々はこれを大きな課題と捉えて、今回の未来予測研究を行いました」と、今回このテーマに取り組んだ背景を語ります。
15~64歳人口と65歳以上人口の推移
加えて、古屋は、「高齢の方々は介護・物流・医療など人の手を介する生活サービスへの依存度が高く、高齢人口の実数がピークに達すると推定される2040年代前半に向けて労働需要がほぼ横ばいで推移していくこともポイントです。これが、労働を担う現役世代の減少とあい まって、この構造的・慢性的な人手不足を引き起こしているのです」と説明します。