リクルートホールディングス代表取締役社長 兼 CEO 出木場久征
次のパートでは、まずIndeed CEOのChris Hyamsが登場し、出木場が話したビジョンの実現に向けて、HRテクノロジー事業ではどのような取り組みを行っているかについて語りました。2004年に創立し、求人情報を1か所にまとめて求職者にシンプル、スピーディー、かつ関連性の高い検索エクスペリエンスを提供するところからスタートしたIndeed。Chrisは、「この求人広告から求人検索エンジンへの変革は、Indeedの成長の第1段階における中核戦略で、これが大成功を収め、トラフィックでナンバー1になることができました。しかし、2011年には、求人検索エンジンとしてできることの限界が見えてきて、私たちは戦略の次の段階、すなわち求人検索エンジンからマッチングプラットフォームへの変革に着手したのです」と、Indeedの20年間の歩みを振り返りました。さらに、優先度高く進めている2つの戦略的取組み、「マッチング効率の向上」と「効果的なマネタイズ」についても触れました。
Indeed CEOのChris Hyams
1つ目の「マッチング効率の向上」については、求職者担当のエグゼクティブバイスプレジデントであるMaggie Hulceと、採用企業担当のエグゼクティブバイスプレジデントであるRaj Mukherjeeが、それぞれ3つのポイントに分けて説明しました。1つ目のポイントは「幅広いリーチの提供」。求職者に向けては、求人票、リアルな職場レビュー、キャリアガイド、給与情報などをワンストップで提供することでより多くの求職者から選ばれる存在を目指すとMaggie。一方の採用企業向けについてはRajが、Indeedは300を超えるATS(採用管理システム)と既に互換性があることを挙げ、「これによりさらに何百万社もの採用企業から選ばれる存在になれる」とその可能性を強調しました。続いて2つ目は「マッチングの最適化」。Maggieは、求職者のスキルと希望条件に基づいてパーソナライズされた求人をレコメンドすることで、より最適なマッチングを提供する取り組みに触れ、「生成AIを用いて検索をアシストする機能を米国でテスト導入したところ、求職者が自分で検索した場合に比べて17%ポイント高い応募につながった」とその効果を明かしました。一方、採用企業向けには、スクリーニング質問機能や、900のスキルをスピーディーにテストできるIndeed Assessments(注1)、AIの候補者レコメンドに基づいて簡単に書類選考や個別連絡が可能になるSmart Sourcing(注1)などを通して、要件を満たした候補者をより簡単に見つけられるようプロダクトを通して支援しています。そして3つ目は「コミュニケーションの高速化」。Maggieは、求職者のスキルのアピールから、応募、面接、最終的には採用されるまでを支援するツールによって、求職者と雇用主のやりとりをスムーズにしていく取り組みを紹介し、「特にモバイルアプリ、Indeedエントリー、Indeedメッセージ(求職者と応募先企業とがやり取り出来る機能)、Indeed Web面接機能などが強力なドライバーになる」と説明しました。採用企業向けプロダクトについてはRajが、「自動化とAIによって求職者と企業のコミュニケーションの高速化を図っており、2019年の導入以降、Indeed上のメッセージング機能を通して何十億件ものメッセージが交わされています。昨年だけで800万件の面接が行われ、結果的に44%速く採用ができるようになりました」とそのインパクトの大きさを強調しました。
続いて再びChrisが登壇し、注力している取り組みの2つ目、「効果的なマネタイズ」について説明しました。現在Indeedのテイクレート(一年目の年収に占める採用コストの割合)はわずか1%であることを紹介し、「提供している価値に比して低すぎる分野がいくつもあり、これには改善の余地、つまり大きなマネタイズの機会がある」と述べたChris。具体的な方法として、スポンサー求人の比率向上、Indeedエントリーに接続できるATSの拡大による企業クライアント数の増加、年収の高いポジションへの提供価値ベースの課金システムの導入、Indeed Flex(注1)やIndeed Agentなどのより採用に近い部分に関わるサービスへのクライアント企業の利用促進などを可能性として挙げました。「やるべきことは山ほどあるけれど、より多くの採用と売上の実現に向けた可能性を考えるとワクワクします」と、Chrisはスピーチを締めくくりました。
(注1)英語サイト、日本未展開サービス
IndeedのChris Hyams、Maggie Hulce、Raj Mukherjee
次に、日本で人材事業を推進するリクルートからは、代表取締役社長の北村吉弘と、人材領域プロダクト担当の山口順通の2名が登壇し、米国に次いで世界第2位の市場規模を持つ日本での取組みを紹介しました。転職経験者が圧倒的に少ない、人材市場が雇用形態や地域などによって細分化されているなど、独特な日本の人材市場で創業以来60年以上にわたって人材マッチング事業に携わってきたリクルート。北村は「従来の細分化された人材マッチングサービスのメリットを維持しながら、働き方の変化やスキルベースでのマッチングが徐々に進む中で、リクルート独自のデータやテクノロジーを活用して、多様な求職者と多様な仕事がより効率的に出会えるための進化を模索しています」と語りました。そして、Indeedが2024年1月末から、HRテクノロジー事業のテクノロジーとマッチング&ソリューション事業のデータやノウハウを組み合わせた、多様な求職者と多様な仕事の効率的なマッチングを実現する求人配信プラットフォーム「Indeed PLUS(インディードプラス)」の全国展開を開始したことを紹介。「タウンワークやリクナビNEXTなど人材領域で運営するジョブボードはIndeed PLUS連携求人サイトとなりました」と現在の状況を説明しました。
山口からは、Indeed PLUSとの連携について具体的に説明。Indeed PLUSとは、採用企業がIndeed PLUSと連携するATSを通じて求人をポストすると、その内容・特性や閲覧・応募状況等に基づいて、Indeed PLUS連携求人サイトの中から最適と判断される求人サイトに、求人が自動で配信される機能(注2)で、Indeed PLUSによって求人票や応募者情報が標準化され、より多くの求人サイトにリーチでき、機械学習やAIで最適化されたマッチングが利用できるようになります。「Indeed PLUSとリクルートの求人サイトの連携により、求職者はより多くの求人の中から仕事を選択することが可能になり、企業クライアントはより多くの候補者の中から求める人材を、より速く、効率的に採用することが可能になることが期待できる」と山口。現在リクルートグループが日本で運営するジョブボードの大半と2つのATS(Airワーク採用管理とジョブオプ)は既にIndeed PLUSと連携しており、また26社のATSがIndeed PLUSと連携予定です。山口は「今後は、リクルートグループ以外の求人サイトもこのネットワークに参画することで、求人サイトを利用する求職者により多くの仕事の選択肢を提供することができるようになるでしょう」と述べました。
最後に再び北村が、「日本での労働市場を取り巻く環境が大きく変化するなかで、今ある採用の仕組みに留まることなく、日本国内で多様なサービスを展開している私たちだからこそできる、求職者と仕事のより効率的なマッチングを推進していきます」と語りました。
(注2)求人の内容・特性等に照らしてIndeedが最も当該求人に相応しいと判断したサービス(Indeed PLUS連携求人サイト)へ自動掲載します。複数メディアではなく単一メディアにのみ掲載されることもあり、また、Indeedの利用規約、掲載基準及び使用制限が適用されます。
リクルートの北村吉弘(左)と山口順通
次に派遣SBUのRGF StaffingでCEOを務めるRob Zandbergenが登壇し、人材派遣事業での取り組みを共有しました。RGF Staffingは、売上高では世界4位の人材派遣会社であり、コンバージョン率にもとづく生産性で見ると世界トップです。「2016年以降は企業買収を行っていない中で、過去5年間で調整後EBITDAの40%成長を実現できたのは、ひとえにオーガニック成長と生産性の向上によるものです」とこれまでの現場における改善の成果を強調したRob。一方で、「人材派遣事業は、依然として労働集約的で、人の手による複雑なプロセスが数多くあります。また、市場も非常に細分化されていて、かつカバーしているのも労働人口のうちのごく一部。成長の余地も、テクノロジー企業によるディスラプションの余地も大きい」とも述べ、人材派遣市場の持つ可能性を強調しました。
さらに、「これまではSBU単体で取り組みを進めてきましたが、今後はリクルートグループ内のマッチングエンジンを含めたテクノロジーを活用していきます。人材派遣企業でありながら、リクルートグループ内のテクノロジーを活用できるという、私たちのユニークな立ち位置を活かして、採用プロセス全体のデータ活用と自動化を進めていきます」と述べたRob。既に進んでいる他SBUとの協業の例として、IndeedとRGF Staffingが2019年から米国と英国で進めてきたシフト人材派遣プラットフォームIndeed Flexが多くの求職者に既に活用されていること、さらに日本でリクルートのAIマッチングエンジンを試験的に活用したところ90%も多く応募につながったことなどを紹介しました。そして、「このように生産性や効率を上げられる可能性はまだまだあり、これが私たちの未来を決めるカギになります」と語り、「RGF Staffingは、人材派遣事業のナンバーワン、最も革新的なプラットフォームになることを目指します」と、新たな方向性も共有しました。
RGF Staffing CEOのRob Zandbergen
最後に出木場が再び登場し、以下のように述べてイベント初日を締めくくりました。
「私たちは、今後10年でテクノロジー、特にAIが進化し、人々の仕事探しは今とは全く違うものになると確信しています。そしてそれを実現できるのは私たちしかいないという強い責任感を持って、世界の人材マッチング市場の進化をリードしていきます。仕事とは誰にとっても重要なものです。私たちのゴールは人々が何でもいいから職を見つけることではなく、人生が少しでもよくなるような、情熱を注げる仕事を見つけるお手伝いをすることです。」
Q&Aセッションも含めたイベントの様子はぜひ録画でご覧ください。