創業65周年を迎えたリクルートグループ。リーダーたちはどんな問いに向き合い、何を考え、どんな未来を創ろうとしているのか。SBU横断のHR領域の変革をリードしてきた甲斐 駿介に、2024年にインタビューした内容を一部再編集して紹介します。

甲斐 駿介
マッチング進化のヒントは日本の人材紹介サービスに
「HR領域のNo.1サービスはどうあるべきか。」2020年頃、米国Indeedオフィスに出向してAIマッチング機能の立ち上げとグロースを担当した時、そんなことを考えていました。企業の採用担当者は求人に対して大量の応募を受けて忙しく、求職者は応募しても返信が来なくてさらに応募するというループを、AIマッチング機能を導入することで一定は解消できた。でもまだマッチングの進化が足りない気がする。出木場久征さん(当時リクルートホールディングス取締役 兼 副社長執行役員)とそんな雑談をした時、「ヒントは日本の人材紹介サービスにあると思う」と予言めいた言葉をもらいました。「そのアイデア、やり残したままでいいの?」と発破もかけられつつ、テクノロジーを活用して、日本のHR領域のプロダクトを進化させる役割を任されたのは願ってもない機会でした。世の中の”モノサシ”が変わるような何かをやりたい、と働いてきましたから。
帰国して日本のHRビジネスを観察すると、そこには想像以上に細かい採用決定に関するデータ、そしてキャリアアドバイザーの深い求職者理解・企業理解に基づいたマッチングの知見があることに驚かされました。米国Indeedでテクノロジー起点のプラットフォーム開発の素晴らしさを体感し、日本のリクルートで長年に渡って蓄積されたマッチングの知見に感動した自分には、「どう考えてもそれぞれの強みを”いいとこどり”したほうが良い」と思えてくる。日本でマッチングを進化させ、連携求人サイトごとに最適化された複数のマッチングロジックを持つプラットフォームを開発し、グローバルにも活用できるようにしたい。そう出木場さんに進言し、2021年の秋にはSBU横断でのHR領域の変革プロジェクトを進めることになったのです。
プロジェクト関連の沿革
・2021年3月 『リクルートエージェント』にAIによるレコメンド機能を導入
『リクルートエージェント』において、キャリアアドバイザーによる求人紹介に加えて、AIが求職者の希望や登録情報と求人の募集要件を考慮し、双方の希望にマッチする求人をおすすめ(レコメンド)する機能を導入
・2022年12月 『レジュメ』リリース
経験職種に応じた質問に選択式で答えていくだけで簡単に職務経歴書が作成できる『レジュメ』を『リクナビNEXT』に導入
・2023年12月 『リクルートダイレクトスカウト』リニューアル
『レジュメ』やAIによるレコメンド機能を導入。テクノロジーと人材紹介のノウハウを活用し、求職者と企業の出会いをより良いものにするサービスとしてリニューアル
・2024年1月 本プロジェクトとの連携によりIndeedが『Indeed PLUS』提供開始
複数のIndeed PLUS連携求人サイト(注1) と複数のIndeed PLUS連携ATS(Applicant Tracking Systemの略。採用管理システム)をつなぎ、求職者と求人のより効率的なマッチングを実現するために開発された求人配信プラットフォーム
・2025年1月 新しい『リクナビ』提供開始
2027年卒以降の全学年を対象としたサイトとしてリニューアルし、ロゴやサイトデザインも変更。企業単位の掲載から職種やコース単位での掲載に変更、レジュメや『ガクチカAIアシスタント』機能を導入。クリック課金で採用コストの最適化が可能に
(注1)『Indeed』『リクナビNEXT』『タウンワーク』『フロム・エー ナビ』『はたらいく』『とらばーゆ』『リクナビ派遣』『物流・ドライバー求人サーチ』に加え2024年10月以降『求人ジャーナルネット』『ディースターNET』『しゅふきた』などリクルートグループ外からも参画
HR techの未来を作る
『レジュメ』の開発、Indeedによる『Indeed PLUS』の提供と同時にリクルートの参画なども始まり、今は土台が整ったステータス。株式会社インディードリクルートパートナーズ、株式会社インディードリクルートテクノロジーズの設立により組織体制も整い、目指す世界の実現に向けて2歩目を踏み出した感覚です。
もちろん、歴史あるビジネスのプロセスを変革する取り組みですから、一筋縄では行かないことが日々沢山あります。ですが、「10年後の仕事探しも今のユーザー体験のままなんだっけ?」というシンプルな問いかけが、自分たちをここまで支えてくれました。HRというひとつのドメインにイノベーションを起こせるかもしれないなんて、最高にワクワクしています。

甲斐 駿介(かい・しゅんすけ)
株式会社リクルートホールディングス 経営企画本部 兼 株式会社リクルート プロダクト統括本部(注2)
大学院卒業後、2016年リクルートライフスタイル(現リクルート)に入社。『Airレジ』開発、2017年『Airメイト』の開発 兼 プロダクト責任者、2019年Indeedに出向し渡米。AIマッチング機能の開発に携わる。2021年8月よりリクルートホールディングスHead of JP HR-tech productとなり、2022年4月に横断の組織が設立された際に同組織のVice President(以下VP)に。同年11月より中途プロダクトマネジメントユニットのVPを兼任。2025年4月よりインディードリクルートテクノロジーズのHRプロダクト オンラインプラットフォーム担当執行役員に(現任)
(注2) 本記事は2024年のインタビューを再編集したものです。肩書きや内容はインタビュー当時のものです。