「あと少しのお金があれば、やりたいことができるのに…」。誰もが抱きうるこの潜在的なニーズに応えるべく、株式会社リクルートと株式会社三菱UFJ銀行が共同出資する株式会社リクルートMUFGビジネス(以下、RMB)が2025年7月に提供を開始した個人向けローンサービス『エアウォレット クイックローン』。その開発を推進したRMB取締役COOの西脇源太に、サービスが生まれた背景や思いについて、話を聞きました。

RMB取締役COOの西脇源太
資金不足というハードルが阻む、人々の挑戦や生活の選択肢
「日常生活において、学費や急な医療費、冠婚葬祭、あるいは旅行や自己投資など『あと少しお金があれば…』と思う瞬間は誰にでも経験があるのではないでしょうか。リクルートが支援してきた教育や就業・転職・転居といった領域でも、『受験費用があれば資格取得に挑戦できたのに…』『初期費用があれば引っ越して仕事を変えられたのに…』といった声が多くありました」と、西脇は背景を語ります。
一方で、日本において”お金を借りる”という行為には、いまだ根強い抵抗感があるのも現実です。「借りたいけれど借りられない」「怖くて踏み出せない」とためらい、結果としてチャンスや選択肢を失っている人が少なくないことが、アルバイトやパートで働く方々を中心としたユーザーへのヒアリング(注1)を通じて改めて浮き彫りになったと西脇は言います。実に8割以上の人に資金不足の経験があり、そのうち3割が借り入れせずに諦めているというのです。
西脇はリクルートが『エアウォレット クイックローン』を提供する意義をこう語ります。「職業や年代を問わず、日常で「あと少し」を必要とするあらゆる場面に寄り添いたいという想いから生まれました。リクルートの既存サービス『エアウォレット』(注2)が持つ接点を最大限に活用することで、“借りにくさ”を徹底的に解消しています。私たちの目的は、ローンサービスそのものの提供ではありません。人の可能性を後押しする手段として、サービスを拡げたという位置づけなんです」。
(注1) リクルートが提供するアルバイト・パート向けのシフト管理・給与計算アプリ『シフトボード』ユーザーを対象としたアンケート結果(2025年2月10~23日、回答人数:43,466名)
(注2) RMBの決済ブランド『COIN+』を利用してチャージ・支払い・送金・出金が無料でできるサービス
「簡単」と「安心」を両立させるサービス設計
サービス開発にあたって西脇たちが特に力を入れて取り組んだのは、心理的・物理的ハードルを下げること。「まず、お金を借りる行為は個人情報の入力や審査など工数が多いことから、とても面倒なことだと思われているので、そのハードルを下げました。『エアウォレット クイックローン』の最大の特徴は、まさに“とにかく簡単であること”です。申し込みには、送金アプリ『エアウォレット』の利用が前提となりますが、既にアカウントをお持ちの方であれば、借り入れのための入力項目はたったふたつ(注3)。任意のログインパスワードと希望金額を入力するだけです。申請後、最短5分(注4)でアプリ残高にチャージされるか、指定口座に振り込まれます。夜間や休日でも申請・受け取りが可能な点も大きな利点です」と、西脇はその速さ、手軽さへのこだわりを語ります。

わずか2項目の入力だけで、最短5分(注4)で借入できるAirWALLETクイックローン
(注3) 『エアウォレット』で本人確認を済ませていること、および事前アンケートに回答していることが条件。ただし、雇用形態によっては1~2項目の追加入力が発生する
(注4) 借り入れには審査があり、お申込時刻や審査によりご希望に添えない場合がある
一方で西脇は、簡単に借りられることの弊害にも気を配ったと言います。「私たちは“簡単に”借りられることは目指していますが、“軽く”借りさせることを目的にはしていません。使いすぎてしまうかもしれない、という不安を取り除くことにもこだわりました」と西脇は強調します。「例えば、申し込み前に返済シミュレーションを行ってもらう仕組みになっていて、申し込み前に返済イメージを明確にすることで、計画的な利用を促します。また、プッシュ通知による返済スケジュールのリマインドや、マイページ上には借り入れ・返済状況を常に把握できる機能があり、ユーザーは『今どれだけ借りていて、どれだけ返す必要があるのか』をいつでもどこでもみることができます。さらに、借り過ぎを抑える注意喚起機能や、アルバイトの給与・シフト管理アプリ『シフトボード』と連携し、働いた分や今後のシフトに基づく給与を確認しながら計画的な借り入れができる機能の拡充も予定しています。これは、使いやすくする、という単純な機能改善ではなく、安心してユーザーが利用するための重要な仕組みだと位置づけています」と西脇。
なお、与信審査や貸付業務は、三菱UFJフィナンシャル・グループにおいてエンベデッド・ファイナンスを提供するGeNiE株式会社が担当しており、リクルートは集約および金銭の貸借の媒介サービスを代理店として提供する役割を担っています。これにより、適切な運用体制が確保されています。
こうして簡単に借りられる仕組みと、利用者が安心して使える仕組みを両立した『エアウォレット クイックローン』。「金融業界において、今回私たちが行ったような“入力項目を極限まで減らす”という試みは前例が少なく、何度も調整を重ねながら進めました。法律の要件やセキュリティ面を守りながら、いかにユーザーの皆さまの利用までのご負担を減らすか。地道な調整と試行錯誤の連続でした」と西脇は振り返ります。
資金提供を通じて、より多くの人の機会実現へ
「人生の大切な選択肢の多くには、どうしても“お金”が関わってきます。そのときに『お金が足りないからあきらめる』『選択肢が持てない』という状況があるとすれば、それは非常にもったいない」と西脇は言い、さらに「日本において、ローンというサービスは世の中のイメージもあり、賛否があることは理解しています。ですが、クレジットカードや奨学金など、“借りて返す”という仕組みはすでに日常に浸透しており、ローンと本質的な違いはありません。それにもかかわらず、ローンだけが特別にネガティブなものと見なされてしまうのには、違和感を覚えていました。重要なのは、”本当に必要な人が、必要な時に、適切な範囲で利用できること”です。この視点を見失わなければ、資金提供はむしろ、誰かの未来を切り拓く手段になり得ると信じています」と、このサービス開発に込めた思いを語ります。
最後に西脇は今後の抱負を語りました。「私たちは、ローンという手段を一方的に勧めたいわけではありません。正しく設計された仕組みを、必要な人に、必要なタイミングで届けることで、未来の選択肢が広がると信じています。『エアウォレット クイックローン』がその一助となれるよう、これからも誠実にサービスと向き合い、進化を続けていきます。」

西脇 源太(にしわき・げんた)
株式会社リクルートMUFGビジネス 取締役COO 株式会社リクルート SaaS領域プロダクトマネジメント室 新規決済プロダクトマネジメントユニット Vice President
戦略コンサルティング会社で幅広い業界を対象に戦略構築等に関わった後、2015年に株式会社リクルートライフスタイル(現・株式会社リクルート)に入社。旅行情報誌『じゃらん』の関連サービスや新規事業検討に携わった後、RMBに出向し、取締役COOに就任