推薦システム分野において権威のある国際会議RecSys(ACM Recommender Systems Conference)の併設コンペティションRecSys Challenge 2025(英語サイト)で、株式会社リクルートおよび株式会社インディードリクルートテクノロジーズのデータサイエンティストチーム“rec2”が、世界中から参加した416チームの中で優勝を勝ち取りました。チーム立ち上げの背景から結果を出せた理由、さらに現地での学びを、株式会社リクルートプロダクト開発データ推進室の澤田佑樹に聞きました。
個人の挑戦を支える制度を活かし、会社横断の有志チームで挑戦
所属するデータ推進室で、日々データサイエンスの技術を活かしてマッチングの進化やプロダクト開発に携わっている澤田。彼の所属組織では「データサイエンティスト一人ひとりの力量そのものが価値の源泉」と考えられており、「『クラウド支援制度』という、今回のような対外試合で腕を磨く挑戦を組織的に応援する仕組みがある」と言います。
今回のRecSys Challengeでも、このクラウド支援制度を活用。澤田が「興味のある方、一緒にやりましょう」と有志を募ったところ、リクルートグループ内の2社から6名が集まり、コンペへの挑戦が始まりました。
対外試合で磨く、サイエンティストの技術力
澤田によると、RecSys Challengeは「SpotifyやXなど、実際のサービスの実データを使って、推薦システム(レコメンド技術)を競う点が特徴」のコンペティションとのこと。グローバル企業が実際に抱える課題に対する解決策を提案し、その精度を競う。世界のトップ企業や研究者が参加し、膨大なデータを使って最高のレコメンド機能作りにトライする頭脳戦です。
澤田を含めたrec2チームが挑んだ今回のテーマは、「ECサイトにおける過去の顧客行動データ(閲覧・商品購入、カート出し入れなど)をもとに、顧客の将来の行動を高精度に予測する」こと。そのために、企業の意思決定に役立つ複数の予測課題に横断的に使用できるユーザー表現(Universal Behavioral Profiles, UBP)を構築することでした。解約予測や購買予測を含む6つのタスクについて、提出されたユーザーごとの数値表現(Embedding)を入力として用いる規定の学習・評価パイプラインがスコアリングサーバー上で自動実行され、これらの統合的な精度が競われました。
rec2チームは、Transformerを用いたContrastive LearningおよびMulti-task Learningの手法、ルールベースによる行動データの集約、さらにこれらの出力のStackingを組み合わせることで、優勝を果たしました。
より技術的な詳細についてはRecruit Tech Blogをご覧ください。

コンペ終了の瞬間をオフィスで集まって迎えたメンバー
国際コンペで得た学びをビジネスの成果へ活かす
チームは2025年9月22日〜26日ににチェコ共和国の首都プラハで開催されたRecSys 2025のワークショップに参加し、優勝チームとして今回のテーマにいかに取り組んだかを発表しました。
今回の挑戦を振り返って澤田は「こういった場で学んだ技術がビジネスの成果につながることもありますし、受賞は世界の優秀な人材にリクルートの名を知ってもらう機会にもなります」と言い、さらに「データサイエンスは、“データ”を使って良質な体験の再現性を高める、プロダクトやサービスの進化を左右する重要な技術です。現実のサービス改善に直結する技術力を試すコンペで結果を出せたことは、リクルートグループにレコメンドの質を世界水準で高められる力があることの一つの証左だと思います」と語りました。そして最後に、「技術力を一層磨いて、本業でのマッチングの進化に貢献していきたい」と今後の抱負を述べました。

プラハでの発表を終えたチームrec2のメンバー(武井 柊悟,長妻 雄飛, 長谷川 麟太郎, 澤田 佑樹, 阿内 宏武, 米川 和仁)

澤田佑樹(さわだ・ゆうき)
株式会社インディードリクルートテクノロジーズ HRプロダクト データ データソリューションユニット データサイエンス部 株式会社リクルート プロダクト開発 データ推進室 データテクノロジーユニット データサイエンス・機械学習エンジニアリング部
2021年大学院修了後、株式会社ディー・エヌ・エーを経て25年リクルートへ。一貫してデータサイエンティストとして活躍。画像生成・検索・レコメンド等の経験をもつ。現在はインディードリクルートテクノロジーズでHRサービスのデータサイエンスを主業務としながら、領域横断でデータサイエンスのナレッジシェアに関わる