「その場で空き状況が分かるのが便利!しかもそのまま予約できるとかめっちゃいい(20代 男性カスタマー)」
「電話でお店に空席状況を確認しなくていいの神!だいたい断られる時はお店が忙しい時で店員さんも不機嫌だから、なるべく電話したくなかったんです(20代 女性カスタマー)」
「こんな寒い日にも、お店探しに歩き回らなくて良くなるなんて最高ですね(30代 女性カスタマー)」
2026年1月、マッチング・マーケティング・テクノロジーSBUのリクルートから新たなアプリサービスがリリースされました。『ホットペッパーグルメ』の「席押さえ」機能です。リリース直後から、先に挙げたような驚きと喜びの声が聞こえています。日本の外食文化においてなぜこのアプリが革新的なのか、開発の裏にはどんな挑戦があったのか、プロダクト担当者たちの声を交えながらお伝えします。
「今の気分でお店を決めたい。」人々の本音に応える新機能
日本の飲食店情報を掲載し、オンライン予約機能やお得なクーポンを提供するウェブサイト『ホットペッパーグルメ』。そのアプリの機能として登場したのが「席押さえ」です。自分の位置情報をもとに、15分程度で入店できる飲食店が地図上に表示され、そのまま数タップで席を押さえることができます。あとはお店へ向かうだけ。待たされることもなく、スムーズに入店、着席することができます。

一般的に、飲食店の予約と言えば数日前に取っておくべきものというイメージがあるなか、なぜこのサービスを検討したのか。プロダクトの統括責任者である石川周平はこう説明します。
「2025年に社内で実施した調査結果(注1)では、予約して来店するのは外食全体の一部。約63%は当日お店に直接来ています。しかもそのうちの3割以上は、来店前の60分の間に、お店を探して決めているということが分かりました。この方々は、前もってお店を決められない、またはあえてそうしていると考えました。
例えば仲の良い友人4~5人で飲みに行こう、というシーンをイメージしてください。集合して、何となく歩きながら、どのお店に入ろうか会話を始めます。偶然目に入った看板を見ながら“焼肉あるよ!” “俺、昨日も肉だったわ~” “じゃあ違うのにしよう”なんて言い合いながら段々と皆の希望の解像度が上がっていきます。皆のその日のニーズを最大限叶えたいので、あえて当日その場で探したいのです。ところが、やっと皆の意見が合って、お店のドアを開けたら、満席ですと断られる。それが3件、4件と続いて、街を彷徨っていると萎えてきて、もうお店に入るのはあきらめようとなっちゃったりする。これは残念な体験です。
仕事で疲れて“今日はどこかで食べて帰ろうか”という時も同じです。あてにしていたお店が空いていなくて、しばらくお店探しにうろつき、そのうち気持ちが冷めてくる…ということはよくある話でしょう。」

プロダクトの統括責任者である石川周平
石川は、来店直前にしかお店を決められないパターンもあると言います。
「例えば小さなお子さんがいる家族。子どもが靴をはいてくれないなど色々あって、“そろそろ出ようか”と言い出してから既に30分経過している。ファミレスなら入れるかと思ったのに、行ってみたら混んでいて“20分待ち”と言われる。そうこうしているうちに子どもが昼寝の時間になる。こういった時間が読めない状況では、数日前からお店を予約しておくという選択は、なかなか取れないと思います。」
「今の気分で、どこで何を食べるかを自由に選択したい」という、人間らしい欲求。「席押さえ」機能は、その欲求をより豊かな選択肢で叶える可能性もあるようです。
「目に入ったお店にフラッと入るという時に、建物の上の方にある飲食店って見落とされがちです。でも、空中階(建物の2階以上)にはカフェやバーも含め、沢山の飲食店があるんですよ。個性豊かな個人店も多い。これまで、本当は気分にあったお店に入ることができたかもしれないのに損をしていたユーザーが沢山いたと思います。『席押さえ』が活用されることで、ユーザーと飲食店の出会いの機会が増えるはずです。」
Help Businesses Work SmarterというMMT SBUの戦略に照らしても、「席押さえ」機能は理にかなっていると石川は説明します。
「お店側の集客の不安が少しでも減り、その分、料理やサービスなど、本当は集中したかったことを追求できるようになるといいなと思っています。また、飛び込み来店よりも『席押さえ』経由の方がよりマッチ度の高いお客様と出会えるようになる可能性にも期待しています。」
(注1) インターネット調査(2024年7月実施)。20代~60代の男女10,000人(北海道、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、奈良、広島、福岡)を対象に実施。【予約の有無】予約を受け付けている飲食店で、直近半年以内に夜に外食した経験がある5,869人について、直近の外食から最大3件の来店(計13,392件)を集計。【お店を決めるタイミング】上記のうち、予約せずに外食した経験がある1,000人について、同様に最大3件の来店(計1,904件)を集計。
25年の挑戦の歴史。紆余曲折が積み上がって形になった
15分前でも飲食店を予約できる。
この便利なサービスは、一朝一夕ではできなかったと石川は語ります。
「『ホットペッパーグルメ』には、飲食店の予約や空き状況の確認をより簡単に、速くしようと試行錯誤してきた歴史があります。クーポンマガジンとして2000年に始まり、インターネット化で電話予約以外の方法が出現し、『Airレジ』や『レストランボード』といった店舗へのSaaS提供を通じて空席状況を一覧化できるようになり、『Airウェイト』を開発した辺りからは来店当日の待ち時間提示といった、リアルタイムの情報提供へのチャレンジも始まっていました。そんななか突破口となったのが、コロナ禍に開発が進んだ『Airレジ オーダー』です。」

『Airレジ オーダー』
「『Airレジ オーダー』には、テーブルのQRコード(注2)をお客さんが自分のスマホで読み込んで、好きなタイミングで注文する機能があります。コロナ禍では3密回避、その後も店舗のオペレーション改善効果やユーザーの注文しやすさの向上などが好評で、この数年で多くの飲食店で導入が進みました。すると、『Airレジ オーダー』を通じて、座席ごとの注文終了やお会計といった細かいプロセスを把握できるようになり、その結果、店舗側の空席状況をリアルタイムでユーザーに開示できる世界が見えてきたのです。」
(注2) 株式会社デンソーウェーブの登録商標
一人ひとりのBet on Passionで難題をクリアする
しかし実現にむけては多くの難題を解く必要があり、従業員たちの主体的な挑戦が欠かせませんでした。例えば、プロジェクトマネジメントを担った浅利 慧は、こう証言します。
「来店する直前に予約できる機能は、実は過去に2、3度挑戦しては撤退してきた歴史がありました。私たちは、過去の敗因を“良いプロダクトを作れば自然に使われるだろう”と思っていたことにあると捉えました。世の中の習慣を変えるような新しいプロダクトは、個人カスタマーに正しく伝えるマーケティングの力や、クライアントに案内し活用をサポートする顧客接点の力も組み合わせて、事業全体総出で挑むことが必要だったのです。今回私たちは、開発、マーケティング、顧客への導入など、実行推進の足並みがそろうよう、社内の体制構築にも注力しました。」

プロジェクトマネジメントを担った浅利 慧
プロダクトマネジメントを率いた今井隆文は、当時の緊張感をこう振り返ります。
「まず、超短納期(100人/月で約5ヶ月)で、高品質なプロダクトを開発するという野心的な目標を掲げました。個人カスタマー向けに新たなUXをゼロから作りつつ、飲食店のオペレーション変更への影響を抑えながら、マーケティング施策と連動可能な仕組みまでをも構築する不確実性の高い挑戦。いつものように実績や見立ての積み上げで考えていたら9~10ヶ月はかかる。それならば目標に対してどう工夫し、どう挑むかに力を注ぐべきだと思ったんです。」

プロダクトマネジメントを率いた今井隆文
今井は、プロジェクトの論点整理からUX設計・プロダクト開発推進まで一気通貫で責任を担うことを覚悟したと言います。
「役職や役割に縛られないよう、自分は何者で何を成し遂げる存在なのかを常に自問自答していました。“これが決まってないからできません” “あの人が決めないから進みません”という状況を作りたくなかったんです。情報をそろえることと並行して、自分の言葉でも“こういうUXでこういうカスタマー体験を創りたい”とチームに発信し続けました。」
入社間もないメンバーまでもが、前例のない難問に挑んでいた、と語るのは石川です。
「日本中のどんなユーザーに対しても“今から15分程度で入店できる”飲食店の選択肢を十分に提供できるのか?この問いが浮上した際に、入社間もないメンバーたちが、日本全国を正方形のブロックに細分化して、力業で検証し始めたんです。
十分な選択肢とは、店舗と人口のバランスで決まるので、繁華街か山間部かによっても判断が変わります。このブロックが山なのか街なのかをどうやって判別するのか?どのくらいの飲食店情報が提供できれば“十分”と言えるのか?検証方法も判定ロジックも自分たちで開発しながら進めていきました。」
未来の当たり前を変えたい
リリースして間もない「席押さえ」機能ですが、既に更なる進化の兆しを感じている、と石川は意気込みます。
「移動手段が徒歩なのか車なのかによっても“15分程度で入店できる”距離が違うと分かってきました。ドライブしながら助手席の方が検索している、というような使われ方もありました。席押さえした後の道案内や、到着時刻予測など、さらにいい体験を創ることができそうな兆しを感じています。」
最後に、これからの飲食業界に期待することや、理想の未来を聞きました。
「ご飯を食べに行こうと決めたら席を押さえてから来店する、という行為を当たり前の文化にしたいです。『10分後に3人で入れますか、と電話してたんだよ』『ドアを開けてみたら、満席ですと断られことがあったんだよ』という昔話が笑われるくらいの未来が理想ですね。リクルートのなかには『ホットペッパービューティー』が美容サロンへの予約文化を推進した先例がありますから、あり得なくはない世界だと思います。
また、日本の企業のかなりの割合は飲食店です。飲食業界が儲かれば、そこで働く多くの個人にも還元されますし、日本の外食産業の多様性、ユニークさを守ることにもつながります。巡り巡って、日本経済を好循環させることにもなるんじゃないかと期待しているんです。」

関連リンク
注文・調理・配膳をカンタンにするオーダーエントリーシステム『Airレジ ハンディ』 | Inside Out | 企業情報 | リクルートホールディングス
『ホットペッパーグルメ』「席押さえ」機能を全国で提供開始 | 株式会社リクルート

石川 周平(いしかわ・しゅうへい)
株式会社リクルート 販促領域プロダクトマネジメント室(旅行・飲食・ビューティー・IDP)Vice President
2011年入社。新規事業を中心に、開発、UX、運用、企画、プロダクトマネジメントなどを担当。SaaS領域のプロダクトマネジャー、決済ビジネスのプロダクトマネジャーを歴任し、2025年より現職

浅利 慧(あさり・けい)
株式会社リクルート 販促領域プロダクトマネジメント室(旅行・飲食・ビューティー・IDP)飲食プロダクトマネジメントユニット 飲食プロダクトマネジメント2グループ グループマネージャー
2016年入社。『SUUMO』開発ディレクション、飲食領域でクライアントWebのプロダクトデザイン、「Air ビジネスツールズ」全体のCRMサービスの立ち上げなどを担当。2023年よりモバイルオーダーのプロダクト組織マネージャーを務める

今井 隆文(いまい・たかふみ)
株式会社リクルート サービスデザイン室 販促領域プロダクトデザイン3ユニット(旅行・飲食・ビューティー・IDP)飲食・ビューティー領域プロダクトデザイン部 飲食プロダクトデザイン2グループ グループマネージャー
2018年入社。『スタディサプリ進路』のUXデザイナー、進学と飲食の2領域での大規模開発案件プロジェクトリーダーなどを担当。22年から『ホットペッパーグルメ』のPdMを務める