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サステナビリティコミットメント発表から3年の進捗を報告:リクルートホールディングス Sustainability Update Fireside Chat 2024

リクルートホールディングスは、2024年7月2日に『Sustainability Update Fireside Chat(座談会)』を開催しました。当日は、取締役兼常務執行役員兼COOでサステナビリティの取り組みをリードする瀬名波文野、ソーシャルインパクトの取り組みをリードするIndeed CEOのChris HyamsとIndeed Chief People & Sustainability Officerの LaFawn Davisから、サステナビリティへのコミットメントであるProsper Together(経営戦略の3つ目の柱)の2023年度進捗をご報告しました。その後、瀬名波と経営戦略・IR担当執行役員の荒井淳一が対談する形で、投資家の皆さんからよくいただく質問にお答えしました。

2030年度までの10年間で達成を目指す5つのサステナビリティ目標の進捗を瀬名波が報告

「2021年に目標を定めてから3年がたち、順調に進んでいるものもあれば、苦戦しているものもある、というのが正直なところ」と瀬名波が前置きした上で、5つのサステナビリティ目標の進捗をお伝えしました。

カーボンニュートラル、障壁ある3,000万人の就業、取締役会の女性比率向上は順調に進捗

まず、気候変動へのコミットメントについて、短期目標である自社の事業活動のカーボンニュートラルは3年連続で達成見込みであること、長期目標のバリューチェーン全体を通じたカーボンニュートラル達成に向けても引き続きパートナー企業とともに協働を進めていること、さらに国際的な環境非営利団体であるCDP(注1)の2023年調査で初めて最高評価であるAリスト企業に選定されたことを挙げ、2021年度から3年連続で順調に推移していることを報告しました。労働市場で学歴、犯罪歴、障がいや軍隊経験など様々な障壁に直面する求職者累計3,000万人の就業を支援する取り組みでは、世界に共通する5つの障壁に加え、今年から欧州を中心に世界で社会問題となっている「難民」のカテゴリを6つ目の障壁として新たに追加したこと、そして全体としてこの3年間で累計690万人以上の採用を実現してきたことを共有。さらに取締役および監査役会の女性比率を50%にする目標についても、2021年度の20%から、現在は33%まで向上したことを挙げました。

(注1) CDPは2000年に設立された英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)。世界最大級の環境データベースを保有し、130兆米ドル以上の資産を保有する746以上の投資家と協力し企業が環境に与える影響を明らかにしてきた

試行錯誤を経て、取り組みが加速する兆しが見えてきた目標も

一方、就業までに掛かる時間を半減する目標については、世界にまだ存在しない「就業までに掛かる時間」の測定に引き続きチャレンジしつつも、2023年度からはプラットフォーム上で精度高く測れる「採用までに掛かる時間」に注目して具体的な取り組みを進めていることを共有しました。

求職者のマイルストンと雇用主のマイルストンの関係性を示した図

求職者・雇用主の採用までのプロセス

そして、グループ全体で全ての階層の女性比率を50%にするというジェンダーパリティ目標については、従業員はほぼ達成しており、上級管理職は上昇しているものの、管理職については横ばいで、引き続き能力開発を通じて候補者プールの拡大に努めていることを報告しました。

新たに注視している2つのテーマ

瀬名波は、コミットメントとして掲げる5つのテーマとは別に、昨今の世界の動向を受けて検討を進めているテーマが他にもあることにも言及しました。ひとつは責任あるテクノロジーの活用について。AIなどテクノロジーの進化とともに、社内の取り組みも進化していけるよう、継続的に議論していると述べました。もうひとつは、欧州で先行して進むサステナビリティ情報開示規制について。最新情報の収集に努めながら、グループ一丸となって準備を進めていることを述べました。

最後に、「当社が掲げる5つのコミットメントは、どれも野心的ではありますが、引き続き、ソーシャルインパクトと当社の持続的な成長を同時に叶えるために、ステークホルダーの皆さんと一緒に、挑戦を続けて参ります」と総括しました。

就業までに掛かる時間を半分にする取り組みをIndeedのChrisとLaFawnが深堀り

続いて、ソーシャルインパクト目標をリードするIndeed CEOのChris Hyamsと Indeed Chief People & Sustainability Officerの LaFawn Davisが、就業までに掛かる時間を半分にするための具体的な取り組み内容を報告しました。

IndeedのCEO Chris Hyamsの顔写真

Indeed CEOのChirs Hyams

Chrisは、雇用主側からの視点である「採用までに掛かる時間」を見ると、その平均値(注2)は55日である(2023年12月現在)こと、そして55日間は主に3つのステップに分かれることを共有しました。

(注2) Indeed上で求人を作成してから採用が確定するまで

求人作成から最初の採用までにかかる時間の平均は55日であることを示した図

雇用主の採用までにかかる時間の平均値

ステップ1:求人作成→採用に至った応募:40%
ステップ2:採用に至った応募→雇用主の返信:20%
ステップ3:雇用主の返信→採用:40%

採用までにかかる時間が3つのステップに分けられることを示した図

採用までにかかる時間の内訳

各ステップを短縮するための具体的な取り組みとして、ステップ1においてはスマートソーシングやレコメンデーション配信タイミングの最適化などによる「マッチングの向上」、ステップ2ではメッセージング機能や雇用主向けモバイルアプリの進化などによる「雇用主のエンゲージメント向上」、最後のステップではIndeed上でのオンライン面接機能や採用管理システムとの連動などによる「面接設定までの時間短縮」を進めていることを説明しました。

Chrisは、採用までに掛かる時間の短縮には、雇用主・求職者双方の行動変容が欠かせないことを伝え、「これは非常に大きなチャレンジで、社会とIndeedのビジネスに与える潜在的な影響は大きく、努力する価値があります。Indeed上以外での行動を私たちが変えるのは難しいため、求職者と雇用主を効果的かつ適切なタイミングでIndeedに誘導するところから始まると思っています」と意気込みを語りました。最後に、「今後も私たちは、採用までにかかる時間、ひいては就業までにかかる時間を短縮するために、採用プロセスのあらゆる段階を革新していきます」と締めくくりました。

続くLaFawnは、テクノロジーとAIにIndeedがどう向き合っているのかについて説明しました。

強調したのは「Indeedは、全ての人にとって、よりシンプルで迅速な採用を実現するためにAIを活用しており、採用における偏見や障壁を減らすために責任あるAIの活用に取り組み続ける」ということ。「AIツールは人間が作り出した固有のバイアスを反映することもありますが、一方で、倫理的に使用されることで公平な競争環境を整え、公平性を確立し、求職者に対するバイアスや障壁を取り除く手助けをするものにもなり得ます」とLaFawnは前置きし、バイアスを取り除くための3つの戦略を紹介しました。

  • 科学的な分析によってIndeedのAIシステムの改良を行う専門チームの構築

  • Indeed従業員が責任を持ってAI開発・導入できるようなツールの構築

  • 人が採用プロセスのすべてのステップに関与し、社内の基準設定と教育に深く関与すること

Indeed Chief People &Sustainability OfficerのLaFawn Davis

Indeed Chief People &Sustainability OfficerのLaFawn Davis

最後にLaFawnは、「Indeedでは、より良い仕事の未来の実現は責任あるAIの活用から始まると考えています。公平な採用の実現に向けて、インクルージョンという観点で採用プロセスを見直し、改善し続けています。トライアンドエラーから学びながら、ベストプラクティスを採用し、公平な雇用機会、アクセシビリティ、スキルファーストの雇用、経済的な生活基盤の安定につながる変革をし続けます。一人ひとりの尊重を中心に据えることが、より公平な社会を築く鍵。バイアスをなくし、全ての人が質の高い仕事にアクセスできるよう、私たちのテクノロジー、知見、そして影響力を役立てたいと考えています」と、今後への意気込みを語りました。

聞きにくいことに切り込んだ瀬名波と荒井のFireside Chat(座談会)

続いて、瀬名波と荒井によるFireside Chat(座談会)を実施。IR担当として投資家の方々との接点が多い荒井から、就業までに掛かる時間を半分にする目標、そして従業員の全階層で女性比率を50%とする目標にフォーカスして、「投資家の皆さんが気になっているポイント」という切り口で、瀬名波にインタビューしました。

Fireside Chatで対談する経営戦略・IR担当執行役員の荒井淳一(左)と取締役常務執行役員兼COOでサステナビリティを担当する瀬名波文野(右)の様子

経営戦略・IR担当執行役員の荒井淳一(左)と取締役常務執行役員兼COOでサステナビリティを担当する瀬名波文野(右)

Q. 「就業までに掛かる時間を半分にする」目標に向けて、「採用までにかかる時間」を新たな指標として導入したとのことだが、これまでの「就業までにかかる時間」との違いとその関係性は?

瀬名波:「就業するまでに掛かる時間」の目標に向けては、初年度に、Indeed上で採用された、もしくは就業されたというフラグが付いた求職者に直接アンケートを送って、結果を集計して15週間というベースラインを設定しました。ただ、この先10年間この取り組みを続けていくことや、毎月約3.5億人のユーザーに使っていただいているIndeedの規模感を考えると、この計測方法はサステナブルではないし、回答者の記憶も正確とは限らないので、Indeed上のデジタルなシグナルで仕事探しの始まりと終わりを計測したい。そう思って2年間チャレンジし続けてきて、おおよその推測はできるようになったものの、これだというものに至っていないのが現状です。しかも、正確に計測したら終わりではなくて、むしろそこがスタートラインで、計測したあとに短くしなくてはいけないので、もう「短くする」ということにドライブをかけたいなと。そこで、しっかり測れる企業側の目線を新たな指標として取り入れました。つまり、ジョブ(求人票)の作成から採用までというのをしばらくはメイン指標にして、実際にどうやってプロダクトで短くするかというところに集中したいと考えています。

荒井:採用までに掛かる時間で雇用主側の視点も取り入れたことで、雇用主と求職者の両方から求められる、利用される採用プラットフォームになっていこうとしていることがよりわかりやすくなったと思います。加えて、短中期の企業価値という視点で見ると、より「速くする」ことと業績への影響との関係が可視化されるようになった気もします。

瀬名波:我々経営としては、雇用主側と求職者側の両方の視点を常に持っていますが、短期的には特に雇用主側の視点、採用までにかかる時間の短縮はすごく重要だと思っています。アメリカの求人数を見ているとコロナ禍で急激に増え、その後はモデレート(緩やか)な状態が続いています。求人数が減少すると基本的に失業率が上がるのが常でしたが、現状はそうなっておらず、労働人口の高齢化などにより人を採りづらい状況になっている可能性があります。

採用したいのにタイムリーにできないということは、採用ができたらもっと事業を成長できたかもしれないという機会損失のリスクでもある。マクロでみるとより採用しづらい状況になってくるので、採用までに掛かる時間を短くすることは、より魅力的になると思います。もともと、掛かる時間を半分にすれば、マッチングの効率が倍になって、つまりはマネタイズの機会も倍になるんじゃないかという期待が元々ありましたが、今後の状況では、倍以上の係数になってもおかしくないのではないかというオプティミスティックな(楽観的な)見方もできるかなと。

荒井:そうすると企業価値というものとソーシャルインパクトが連動してくるのですね。

Q. 女性管理職は、2023年度の進捗を見ると、上級管理職は改善したものの、管理職全体で見ると横ばい。目標は達成できそうか?

瀬名波:従業員の女性管理職比率はグループ全体では苦戦していますが、実は国内と海外では状況が違うので分けてご説明します。国内では、日本で一番大きな主要子会社である「株式会社リクルート」で徐々に管理職比率が伸びています。2006年時点で女性課長相当以上比率が10%前後だったのが、女性管理職比率が2022年に初めて30%を超え、2023年に34%、2024年には36%になりました。

特に効果的だった施策が2つあります。まずは管理職に求める能力や行動要件を明らかにした「管理職要件の明文化」。取り組みの内容は昨年もお伝えした通りですが、2023年はこの管理職要件の明文化を、組織やレイヤーを拡大して展開したのが新たなポイントです。もうひとつ新たな取り組みとして、『Co-AL Partnerプログラム』を開始しました。従業員1人に対して、組織長に加えて、人物理解や育成デザインの技術を習得したパートナーが2人つき、キャリア構築を『複眼』で支援していく仕組みです。従業員が求めるキャリアは多様化しているので、複数の視点を入れることで、一人ひとりの従業員が自分らしいキャリアをデザインすることを支援する、というもの。このような試みを通して、徐々に管理職のプール数を増やしていっている、というのが、今の日本の状況です。

荒井:国内が進んでいて、全体が横ばいということは海外が厳しいということ?

瀬名波:はい。海外は採用凍結があって伸び悩んでいるというのが正直なところですが、将来に向けた「仕込み」は進めています。具体的には、Indeedを中心に「インクルーシブインタビュールール(IIR)」と呼ばれる施策の対象範囲を、米国の上位レイヤーから、グローバルの全ポジションに拡大しました。IIRは、採用候補者プールの性別や人種といった多様性を実現しないと選考を開始できない、というルールのこと。Indeed社内の入社後の昇進率や退職率は男女でほぼイコールなので、採用時点でのダイバーシティが実現されていないことが、その後の管理職のダイバーシティにずっと影響していたことから設けられたもので、採用凍結が解除された時に一気に効いてくると思っています。

2024年度も財務にも寄与するソーシャルインパクト目標に注目を

対談の最後に荒井が、2024年度のハイライト、注目すべきポイントを尋ねました。

瀬名波:力を入れていきたいのは、やはり戦略のど真ん中でもある「就業までにかかる時間を半分にする」目標です。ここでしっかり成果を出していくことは、当社の中長期財務にも大きく寄与するので、取り組みを加速していきたいと思っています。
また、環境とジェンダーパリティの目標については、2030年までのマイルストーンである3ヵ年目標を掲げていて、2024年はこの最終年。来年の今頃には良い報告が出来るといいなと思っています。また、次の3カ年目標も決めていく予定ですので、次に繋がる1年にしたいなと思っています。

瀬名波の力強い言葉で締めくくられた今回のSustainability Update Fireside Chat 2024。ぜひ動画でもご覧ください。

2024年07月30日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。