サステナビリティ
労働市場の障壁を低減し、
3,000万人の就業を支援する
社会へのコミットメント
2030年度までに、世界の労働市場で学歴、犯罪歴、障がいや軍隊経験など様々な障壁に直面する求職者累計3,000万人の就業を支援する(注2)
本来、採用は、仕事に必要なスキルや能力によって決まるべきです。しかし、労働市場に存在するバイアス(偏見)や障壁は、求職者の仕事探しや採用、仕事の継続に悪影響を与えています。
リクルートグループは、プラットフォームの進化、パートナーシップによる支援、そして自社の取り組みを通じて、障壁の低減を目指します。より良い生活を支えるいい仕事との出会いを増やすことで、より公正で持続的なソーシャルインパクトを創出していきます。
具体的には、2021年度より学歴、犯罪歴(注3)、障がい、従軍経験(注4)の有無に関する労働市場の障壁や、求職活動のためのIT(パソコンや携帯等)や交通手段を持っていない求職者(注5)の就業活動の支援に注力してきました。2023年度は、世界で地政学的な緊張感が高まる中で大きな社会課題となっている、難民のバックグラウンドを持つ求職者(注6)が直面する労働市場における障壁を、当社グループとして注力すべき6つ目のテーマとして加えました。今後は、各戦略ビジネスユニット(SBU:Strategic Business Unit)が実施してきた取り組みをベースに、国際人道支援組織と連携しながら、難民の求職者への就業支援に取り組んでいます。
難民のバックグラウンドを持つ求職者のための取り組み
リクルートグループでは、欧州の事業会社を中心に、難民のバックグラウンドを持つ求職者の就職を支援する活動を実施してきました。そして、2022年からは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)やTent Partnership for Refugees(TENT)といった国際人道支援組織との連携を深め、ウクライナを含む世界各地の紛争から逃れてきた人々への支援を拡大しています。
HRテクノロジーSBUにおける取り組み
2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、Indeedはウクライナ難民の救済に向けて会社全体でワーキンググループを立ち上げ、求職者支援、雇用者支援、難民支援団体への支援、Indeed社員による支援の4つを柱としたプログラムを開始しました。例えば、ウクライナ語版のIndeedウェブサイトを新設することで、求職者がウクライナ語で情報を得られるようにしています。
また、UNHCRやTENTといった国際人道支援団体との連携を深め、難民の状況に関する情報収集に努めました。その上で、避難先国での仕事探しの支援を通してウクライナ難民の生活の立て直しに貢献するため、2022年12月に、ポーランドにおいて、欧州地域のチームを中心にUNHCRや国際移住機関(IOM:International Organization for Migration)等の国際団体と共同で就職フェアを開催しました。その後、2023年中に欧州各国でウクライナ難民に限らずすべての難民に向けてさらに5回の就職フェアを開催し、2022年と2023年に開催した就職フェアを通して計測できる範囲だけでも、累計約700人のオファー/採用を実現しました。
イベント参加者や雇用主へのアンケートを通じた計測
人材派遣SBUにおける取り組み
さまざまな障壁により、難民が職を得るのは簡単なことではありません。その一方で、欧州の各国では近年、労働力不足が大きな問題となっています。人材派遣SBUの欧州子会社では、これまで培ってきた移民支援のノウハウを活かし、ここ数年は難民の就業支援を行っています。アフガニスタン、エリトリア、ソマリア、トルコ、イラク、そしてウクライナなど、多くの難民を派遣スタッフとして受け入れ、各国の労働市場への参入を後押ししてきました。
例えば、RGF Staffing Germanyでは国際採用チームを設置し、企業クライアントに難民雇用に向けた働きかけを行うと同時に、仕事の紹介や面接での通訳や翻訳ツールの提供、行政手続きや税制書類の作成支援、住居の手配など、難民の求職者・就労者向けに、就業と就業維持に向けて様々な支援を行っています。その結果、特にウクライナ難民の就業支援においては、2024年4月までに325人の就業を支援してきました。
今後は難民一人ひとりの事情に合わせてより柔軟な働き方ができるよう、企業クライアントと連携し、難民への長期的なサポートの提供を目指して活動を強化していきます。
その他の障壁に対する取り組み
学歴
約6割の雇用主が、候補者に十分なスキルや経験があるにもかかわらず、大学など高卒後の学歴がないことを理由に不採用にしたことがある、と答えています(注7)
犯罪歴
犯罪歴のある求職者は、選考通過や採用の連絡を受ける確率が50%以上低い(注8)
障がい
障がいのある求職者は、仕事探しにおいて障壁に直面する上、仕事をする上で更なる苦労がある場合がある
従軍経験
軍隊生活から市民生活に移行しキャリアをスタートしたい退役軍人は、これまでのスキルや経験をうまくアピールできず仕事探しに苦戦するケースがある
求職活動の必須アイテム(ITアクセスや交通手段など)
インターネットへのアクセスや交通手段などの最低限必要な支援がないと、仕事探しや就業を始めるのが難しい求職者がいる
目標に向けた道のり
2023年度末までに累計で約690万人(注9)の求職者の障壁を低減し、採用を実現することができました。今後もプラットフォームやサービスを更に進化させることで、企業クライアントの中で高まる、インクルーシブでスキルファーストな採用(注10)のニーズに応えていきます。
グループ企業におけるその他の取り組み
マッチング&ソリューションSBU:リクルートの取り組み
日本を中心に事業を展開するマッチング&ソリューションSBUのリクルートでは、2011年より学校や地域の就労支援機関などで展開していた就労支援・キャリア教育プログラム「WORK FIT」を、刑務所や少年院、さらに2023年からは保護観察所にも展開しています。再犯防止という課題の解決に向けて、自分自身と向き合い、社会での新たな生活準備を促すプログラムを提供しています。
人材派遣SBU:RGF Connectを通じた取り組み
人材派遣SBUでは、教育や職業訓練、雇用機会の提供によって、これまで公平な機会を得られなかった人々を支援するプログラム「RGF Connect(英語のみ)」をグローバルに展開しています。
例えば、人材派遣SBUのCSI Companiesの拠点があるアメリカ南部フロリダ州は、地理的・歴史的な背景から有色人種の人々が多く居住しており、直接的な差別は減っているものの、教育や就業機会の面での格差は未だ根強く残っています。そこでCSI Companiesでは、こうした格差を背景に、地域で相対的に採用が厳しい状況にある大学生や高校生向けに、テクノロジー企業での就業機会の提供や、キャリア形成のサポートを行い、2024年4月までに60名の学生がインターンシップを修了しました。今後は、テクノロジー教育に力を入れている地元高校への出資、学生がテクノロジーに触れる機会の提供、大学でのIT関連の専攻選択の促進、大学在学中のインターンシップ機会の提供などを通して、プログラムの拡大を目指します。また、地域外への展開や、学生以外への対象拡大も検討しています。
就業までに掛かる時間を半分にする
コミュニティ支援
- 本ウェブページに記載の年数は、その年の4月1日に開始し、翌年3月31日に終了する当社の会計年度を意味する。また本ウェブページに記載の数値は、すべて概数。
- 当社グループが運営する求人プラットフォーム上の応募を通じた就業、当社グループが支援するNPO等の団体を通じた就業等を含む。2030年度までに、労働市場における課題を見極めた上で様々な障壁の低減を行っていく。
- 米国では3億3000万人の人口に対して、約7,900万人に犯罪歴があり(出典:Prison Policy Initiative, 2024)、犯罪歴がある求職者の失業率は米国平均の約5倍(出典:Prison Policy Initiative, 2022)。
- 2016年に行われた米国商工会議所財団の調査では、退役軍人の53%が退役後4ヶ月以上にわたって、失業していることがわかっている。実際、当社サービスにおいても軍隊生活から市民生活に移行中の退役軍人は、軍で得たスキルや経験を労働市場でうまくアピールできずに仕事探しに苦戦するケースが見受けられている。
- インターネットに接続することが出来ず求人プラットフォームにアクセスすることができない、面接や仕事に行くための交通手段がないといった、求職活動の機会を著しく限定する障壁を示す。
- 紛争、暴力、迫害から逃れるために自国を逃れ、他国に安全を求めた個人(国連難民高等弁務官事務所が定める定義)。
- 出典:Accenture, Grads of Life, Harvard Business School「Dismissed by Degrees:How degree inflation is undermining U.S. competitiveness and hurting America’s middle class.」(2017)
- 出典:Wendy Sawyer, Peter Wagner「Mass Incarceration:The Whole Pie 2020」(2020)
- 2021年5月1日から2024年3月31日までの間に、採用シグナルの測定を通して、世界中の求職者および雇用主からIndeed上で報告された就業データに基づく。学歴、犯罪歴、軍隊経験、障がいの有無、または求職活動のために必要なパソコンやインターネット等を持っていないという労働市場の障壁のうち、少なくとも一つに直面した求職者の就業数の累計。難民のバックグラウンドを持つ求職者は2024年度より計測予定。
- インクルーシブな採用は社会の多様性を反映した職場を実現するために、公正性を高めた採用を実現するための企業の取り組みを示す。スキルファーストな採用は求人に対する候補者を、採用プロセスの初期段階でスキルに基づいて選考する方法。まず学歴で選別する従来の選考方法とは異なり、スキルに基づいた評価を行うことで活躍の可能性がある候補者をリストに含め、業務遂行能力の高い人材を見逃さずに、短期間での採用実現を目指す。